□77.心が君を好きだと勝手に叫ぶの ページ39
***
ﾌﾞｰﾌﾞｰ…、と鳴る携帯にハッと我に返る。
どうやって家に帰ってきたのか覚えていないが
多分しばらくぼーっとしていたのだと思う。
買い物に行ったのは昼頃だったのに、
もう日が暮れて来ている。
.
｢……もしもし、｣
直輝『あ……、A…？』
｢うん、｣
直輝『あのさ、今日なんだけど…、』
.
電話に出てみると相手は直輝だった。
彼からの電話は嬉しいはずなのに、
声のトーンから、これから何を言われるのか
察してしまって気持ちが沈む。
.
直輝『ごめん、やっぱり今日も遅くなりそう。
ご飯食べて、先寝ててね。』
｢………｣
直輝『A……？』
.
｢……今日は早く帰ってくるって言った…、｣
.
いつもなら、“わかった” ってすんなり飲み込むところなのに、
今日はどうしてもそれが出来なくて。
.
｢…一緒にご飯食べようと思ってた…のに…｣
直輝『……ごめん、』
｢……家に1人でいたくない…｣
直輝『…A？なんかあった？』
｢……やだ…｣
直輝｢…ん？｣
｢…なお…き、……帰ってきて…ｯ…｣
直輝『どうした？…A……？』
.
ﾎﾟﾀﾎﾟﾀと重力に逆らえずに落ちていく涙。
やばい…、涙腺壊れたかもしれない。
止めようにも止まらなくて焦る。
“Aどうした？”
って何度も名前を呼んでくれる直輝の声に
尚更胸が苦しくなって、
私はそのまま通話を切ってしまった。
***
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年2月14日 23時
