□72.急転直下の前触れ ページ34
***
あの日一緒にご飯を食べに行ってから
しばらくまた直輝は忙しくて。
一緒にいられない日々が何日か続いた。
“今日は早く帰れると思う”
と連絡が来たのはつい15分ほど前のこと。
たったこれだけの文字数で私の心は一気に有頂天で、
よし…、今日の夜ご飯は腕によりをかけて作ろう、
と意気込んで買い物に行くことにした。
.
.
｢…やっぱハンバーグかな〜…、｣
.
前に作った時に凄く褒めてくれたの。
まあ直輝は何を出しても美味しいよって言って食べてくれるんだけど…、
中でもハンバーグはかなり嬉しそうだったような。
よし、今晩はハンバーグで決まり。
近所のスーパーで必要な材料を買い、
ルンルンで帰路につこうとしたその時…、
.
“…あの、”
.
後ろから声をかけられたような気がして、
振り返ると……、
.
.
｢……………えっ…、｣
あずさ｢こんにちは、Aさん。｣
.
ニッコリと、不自然なくらいに笑みを浮かべている
あずささんがそこにいた。
.
…あ、そうだ、
彼女には1回だけ会ったことがあるんだ。
.
直輝と一緒にいるのをたまたま見かけて…、
“こちら、佐島あずささん、”
“付き合ってる”
そう端的に紹介されて、会ったのは一瞬。
私は少し頭を下げるくらいだったけど、
…あの時のことは強烈に印象に残っていた。
***
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年2月14日 23時
