好き以外の優しい言葉を全部Ⅱ【シロクロ】 (ページ14)

今日:3 hit、昨日:15 hit、合計:331,561 hit

■54. Fragile brake ページ14

***

Naoki side

“危ないことはしないでね…、”

と言って不安気なAを見ていると、

この子はどんな気持ちで、
この部屋で一人、俺の帰りを待っていたのだろう…、
と思ってしまった。

.

あの一件以来、久しぶりにAに触れた気がする。

最近の自分はどうも理性のブレーキが効かない。

…いや、正確に言うと、
ブレーキが効かないのは彼女の前でのみ、なのだが。

.

.

頭を撫でるのは眠たくなるからやめてくれ、
と言われたのだが、

時間帯的にもAのアルコール耐性的にも、
どちらにせよもうすぐ眠ってしまいそうなので、
そこは俺の好きにさせてもらう事にした。

.

サラサラと髪の毛に指を通しながら、
Aの体温を腕の中に閉じ込めていると

ふわっ、と香る彼女の甘い香り。

使っているシャンプーは一緒のはずなのに、
Aが使うと3割増くらいで甘く感じるのは何故だろう。

.

…って、危ない危ない…。
また理性のブレーキが壊れるところだった。

.

つい先日の暴走を忘れたわけでは無い。

あの時のAの顔も鮮明に覚えている。

何も言わず、
ただ泣きそうな顔で俯いていたA。

怖がらせてしまったに違いない。

本来なら、二度とこうして触れることさえ
許されなかったかもしれないのに。

.

Aは俺を信頼してくれているんだ。
俺がその信頼を裏切るようなことをしてはいけない。

***