□42.言わずもがな ページ2
***
｢…じゃあなんで…？｣
直輝｢なんかあったら大変でしょ。
催眠状態の時は記憶なくなるんだよ。
Aにそういうのやりたくないの。
一瞬でもAが記憶なくすとか嫌だし。｣
｢…ふーん。｣
直輝｢…大事なの。わかって。｣
.
彼の手が私の方に伸びてきて、
…あ、頭撫でられるのかな。
って思ったのもつかの間。
私に触れる1歩手前で、彼の手は止まった。
そしてしばしの静寂。
.
結局、直輝の手が私に触れることはなくて。
“そろそろミスパンダの目が覚める頃だAは帰りな。
今日も留守番頼むね”
って、話を変えられてしまった。
.
｢…じゃあ、また。気をつけてね。｣
直輝｢Aも。｣
.
ﾊﾞﾀﾝ、と部屋のドアが閉まる音を聞いて、
私は、はぁ…と大きなため息をついた。
.
＿＿＿＿あの日から、彼は私に触れてこなくなった。
.
あの日、というのは、
言わずもがな彼にキスをされた日で。
まるであの事が無かったかのように
普通に接してくる直輝。
それどころか若干距離を置かれているような気がする。
手を握られることも、
頭を撫でられることも、
抱きしめられることもない。
.
まあ…、元々そういう関係じゃないし、
最近が異常だっただけで。
元通りになったと言えばそれまでなんだけど。
.
好きな人に避けられると
…ちょっとだけ傷つく。
***
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年2月14日 23時
