■69.背中に感じる君の体温 ページ31
***
Naoki Side
川田レンから好きだと告白されたのは
Aがのぼせた日から何日か経ってからだった。
正直言うと、彼女の思いには薄々気づいていた。
というか、自分に好意を持たせることが、
彼女をコントロールするために必要だと思ったから
敢えてそういう接し方をしていたとも言える。
我ながら自分のやっていることの黒さにため息が出るけど、
これも全部、父の事件の謎を解くためだ。
.
結局告白には返事をせずに、そのまま催眠をかけた。
このことはAには話していないけど、
レンの話をする度に過剰に反応する様子を見ていると、
もしかしたら彼女から何か相談されていたのかもしれない。
.
.
｢…直輝、｣
.
キッチンでコーヒーをいれていると背中に何かがぎゅっとくっついてくる感覚。
何か、といっても、ここにいるのは俺とAだけだから、
間違いなくAなんだけど…、
彼女の方からこうやってくっついてくるのは珍しいから、
少し意外だった。
.
直輝｢…ん？どうした？｣
｢……。｣
直輝｢え？なに？どうしたの？笑｣
.
問いかけても反応がなくて、
ただ、ぎゅぅ…っと抱きつく腕の力が強くなるだけ。
.
Aはあまり自分の気持ちを言葉にして言わないから、
言いたいことがある時はこんなふうにくっついてきて
行動で示してくるのだが、
不謹慎ながら、
俺はそんなAを可愛いと思ってしまう。
***
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年2月14日 23時
