□60.角砂糖、一粒 ページ22
***
レン｢…と、まあこんな感じです。｣
｢…なるほど、意外と奥が深いですね、囲碁。｣
レン｢ちょっと休憩しましょうか。
…あ、今飲み物持ってきますね、紅茶飲めますか？｣
｢はい、ありがとうございます！｣
.
彼女と少し話しただけで、
直輝が彼女を私と似ていると言った理由が分かった気がした。
常に何かに怯えているような感じで、
自分に自信がなくて下ばかり見ている。
でも話しかけてくれた人には少しずつ心を開いて、
心を開いて閉まった人には意外と単純に懐く。
まるで昔の私そのもの。
.
レン｢どうぞ、砂糖とミルクはお好みで。｣
｢ありがとうございます。｣
ｺﾄﾝ、と置かれた紅茶の入ったカップ。
私はそれに角砂糖を一つおとして、
スプーンでくるくるとまわした。
.
レン｢…近所に住んでるんですか？｣
｢え？｣
レン｢あっ…、すみませんいきなり。
どうしてこのお店に興味持ってくれたのか気になって。｣
｢……知り合いに、たまたまこのお店を教えて貰って。｣
レン｢へえ…！常連さん…かな？｣
｢………森島直輝、知ってますか？｣
レン｢えっ、森島さん…！？｣
.
知ってるに決まってるよね、ごめん。
直輝の名前を出した途端、
彼女は今日一番大きな声を出した。
ｶﾞﾀﾝ、と勢いよく立ち上がって、
周りの客達も何事かと彼女のことを見ている。
***
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年2月14日 23時
