カメラロールに君を。 【ころん】

双葉。 ページ5

Aside


『こっち向いて〜』

今日は雪が降った。


小学校から連絡が入ってきて、カメラを持って担当の学校へ向かった。


独立してから、複数の幼稚園、小、中、高校生の専属フォトグラファーになった。



昔から大好きだったカメラの仕事が出来たことに誇りはある。





一通り撮り終えた頃に、丁度ポケットの携帯が鳴った。


ツイッターから。


【今日 20時から 久しぶりに ツイキャスします

みんな来てね】


ああ、彼か、と息を吸い込んだ。


配信をするらしい。


彼のそんなツイートに、一瞬で何千通のリプがくる。

勿論、私もその中の一通に過ぎないけど。





もう幾年も前の話だから彼も覚えてないだろう。



……変に名残惜しく覚えてるのは、私の方だけ。



暗い気持ちになりかけつつも、周りの子達と同じようにリプを送った。




……最初は気づかなかった。
聞き覚えのある彼の声に似ているとは思ったけれど、まさかそんなわけはないと思っていた。


気になって、なつかしさに好きになって、


初めてライブに行った日だ。





…彼だった。

あの最後の日とあまり変わらない、彼だった。





また彼を見ることが出来て嬉しい反面、



見つけてしまったせいで諦めがどんどんつかなくなってしまうという悲しさに包まれた。




……でも、後悔はしていない。したくない。




もしいつか再開した時に、笑顔で会えればそれでいい。




カメラマンという印の首掛けを外して、青色のパーカーを脱いだ。





「今日はありがとうございました！！良かったらこのあとお茶でもいかがですか」



いつもそう声をかけてくれるのは依頼主の男の先生。


『あー…ごめんなさい、今日は先約があって』


「そうでしたかぁ、、じゃあまたの機会にしましょう、気をつけて帰ってください」



『ありがとうございます。では』

一礼だけして、学校を出た。






……その先約がツイキャスなんて口が裂けても言えないし。




6時にもなると、流石にもう生徒はいなくて。


しんみりとした校庭を少し歩き回って、お目当てのものを見つけた。




……双葉。


昔から趣味ではこの写真ばかり撮っている。




あの日、あの人とあの場所で撮ったっけ。





準備を整えて、シャッターを切った。



____カシャッ______









知ってる？





子葉が途中でちぎれるとね、



植物は育ちにくくなるんだって。



私にとって貴方は





そんな存在だった。

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