あの日。 ページ3
初雪が降った。
白く綺麗な紙切れみたいな、小さな雪がひらひらと待っている。
思わず電話をかけて、彼女に会いたいと伝えた。
……写真を撮りたいと、小さな嘘をついて。
公園で落ち合った僕達は、カメラで撮る場所を探しはじめた。
『ね、この樹は?』
「ん〜…いいんだけど……」
申し訳なさそうに苦笑いをうかべる。
『じゃ、この雪の積もったベンチ』
「んー……」
渋る彼女が、あっと声を上げた。
声の方を見ると、小さな双葉の芽。
『なに、双葉?』
「そう。撮るよー」
____カシャッ___
シャッター音とともに、あのワクワクが大きくなっていく。
『どう?綺麗に撮れた?』
彼女は画面から顔を上げて、グッドサインを出した。
「勿論!ころちゃんも撮ってみる?」
……そう、僕は何故か、この頃から周りの人にちゃん付けで呼ばれていた。
『あー、うん』
カシャッ……
心做しか頼りないシャッター音が聞こえて、溜息をつく。
『…どう?』
「ころちゃんはまだまだだね〜」
笑いながらカメラの画面をのぞき込んだ。
『なんで!?そっちと変わんないでしょ!』
「そういうところだよ」
コロコロした彼女の笑い声が、未だに残っている。
あの日の思い出は、ずっと残り続けるんだろう。
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リトマス紙青 - きれいな恋模様が描かれていて、読んでいてほんとにドキドキさせてもらいました。更新、お待ちしております。 (2020年3月11日 6時) (レス) id: 2753c7faef (このIDを非表示/違反報告)
リト@歌い手色の占ツク民達(プロフ) - とても素敵な作品ですね。思わず見入っていました。更新、まっていますね。 (2020年3月11日 2時) (レス) id: 411bfd759c (このIDを非表示/違反報告)
りぃず(プロフ) - あずきさん» ありがとうございます。最後までやりきれるように頑張ります……! (2018年12月18日 18時) (レス) id: 7803f93653 (このIDを非表示/違反報告)
あずき - 更新楽しみにしてます! (2018年12月18日 15時) (レス) id: e832122126 (このIDを非表示/違反報告)
りぃず(プロフ) - ろっとさん» コメントありがとうございます!頑張りますッ (2018年12月17日 17時) (レス) id: 7803f93653 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りぃず | 作成日時:2018年11月5日 22時