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29話 ページ34

暫く泣き続けたAは立ち上がろうと
したけれど、立つことができなくて布団に倒れ込む

「何処に行くの?
 ちゃんと話してもらわなきゃ困る」

『………着替えるんです…
 私……寝巻すがたですから……』

「え?話すのに寝巻だと駄目なの?」


Aに聞くと、目を丸くして僕を見た

そして


『……………ふっ…………
 ふふっ………あははっ!
 変わらないですね、無一郎はやっぱり
 ………普通女の子に同じ事言ったら殴られ
 ちゃいますよ!』

Aが笑った
それだけでホッとする


「別に気にしないからこのまま話そうよ」

『んー、仕方無いですね』


僕はAの傍らに座って話に耳を傾けた





『最終選別の後、私は自分の呼吸が
 使えなくなりました
 しのぶ様に検査をしてもらい、出た病名
 が【筋質硬化】
 身体が少しずつ硬まって、このように
 氷の様な、硝子の様な………
 私が死ねば、残った身体は少しずつ
 硬化が進み、最終的には全てがこの様に
 なってしまうのです
 ………夢も奪われ、死後もただの人間では
 居られない………気持ち悪いです
 私はこの病気が』



遠くを見るように、虚空を眺めている


「………綺麗だけど」

咄嗟に出た言葉、嘘ではないけれど自分がこの言葉をAに出した事に驚いた

それはAも同じ様で

『……き…れい?』


すっかり柔らかな肌では無いけれど、透き通ったような輝く腕に手を重ねて言葉を続ける


「何だっけ…………何かの石………









 あぁそうだ、思い出した
 ……これ、金剛石みたいだよね
 気持ち悪いどころか綺麗だと思う」


何だかAに似合った石だ




そう思っていると、Aは僕の肩に顔を埋めた

『……貴方に綺麗と言われる日が来るなんて
 ………世界の女の子に自慢できそうです…
 ……嬉しい……ありがとう…』


その身体は震えていて
抱き締めれば抱きしめ返してきた

その力は弱くても何処か強さがある






「……Aは強いね」

『………少し違います
 独りで強い人間なんかいません
 誰かといる事で人は自分の本当の
 弱さを見つけられるんですよ
 ………私には…貴方だったみたいですねぇ』



「……僕にはAだよ」


Aは笑っていた
それは、いつもと変わらない姿
温かい何かがある









その後、Aは5日生きた

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花みたいに(プロフ) - 名無しになりたいさん» 本当です!直しておきました!本当にありがとうございます! (2019年12月1日 23時) (レス) id: 248b61614a (このIDを非表示/違反報告)
名無しになりたい - 1話の【超屋敷】は【蝶屋敷】の誤りでは…?素敵な小説でした。 (2019年12月1日 17時) (レス) id: af163a7b99 (このIDを非表示/違反報告)
花みたいに(プロフ) - ありがとうございます! (2019年11月25日 6時) (レス) id: 248b61614a (このIDを非表示/違反報告)
真冬 - すっごく素敵な作品でした。 (2019年11月24日 19時) (レス) id: eb4bf42b53 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花みたいに | 作成日時:2019年10月29日 5時

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