信じていたいから。【文スト】

少女の話。 ページ29

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誰もにとって、彼女はイレギュラーだったの。



いれぎゅらー？
おばあちゃん、私難しいお話わからないよ



まだわからなくていいわよ。
いつか、きっとわかるわ



...話を続けるわね。

彼女はね、神ですら越えたの。
神の考えを、一撃で折った。

人は完全(完璧)を求める。
だから神は人間を哀れだと笑っていたのよ。



けどね、彼女だけは違ったの。

彼女は、頼れるものと愛だけがあればよかったの。

それほどに、彼女は弱っていた。

......そうね、舞ちゃんは階段を上るとき、まだ手摺を使うでしょ？



てすり？あぁ、あのぼっこ？




そうよ。

彼女はね、手摺がないと堕ちてしまうほどに弱い体で生きていたの。

故に、神の考えをも覆した。

そのとき、神はどうなったと思う？



...わかんない。



そうね、舞ちゃんには無理よね。

神はね、全員の標的になって攻撃を受けた。

......それこそが、神の案だったの。



正確には、神とイレギュラーである少女のね。

神と少女は、裏で手を組んでいたのよ。


“神が一時的に消えれば、みんなは一時的に頼る手摺がなくなる”って。

手摺を消すことによって、自分たちを従わせようとしたのよ。



おばあちゃん、その少女の名前は？




......森 綾音よ。



森綾音？




ポートマフィアの首領、森鴎外の妻。

今はもう、死んじゃったの。



死んじゃったの？



子供もいて、夫もいて幸せだったはずなのに。

子供一人残して逝ったわ。

...消えなければ、あの子は痛みを知らずに生きれたはずなんだけどもね。


......あら、もうこんな時間。

舞ちゃん、早く寝なさいな


はーい、おばあちゃんお休みなさい


ええ、おやすみ。





...私がちゃんとしていれば、綾音は、死なずに済んだのかしら。

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