だから、渡辺は好きじゃなかった。【青】 (ページ10)

今日:1 hit、昨日:117 hit、合計:391,646 hit

＊わかんないけど。ページ10

.

家に帰ってようやく1人の時間を得て

疲れたな…と少し早めに包まった毛布。

照明をおとそうと手を伸ばしかけた時

枕元のスマホが震えた。

表示された名前を見て、小さくため息をついてから耳に当てた。

「 …はい、」

『あ、起きてた？深澤だけど。』

「寝ようとしてたので切っていいですか。」

『えー、ダメ。』

「短く済ませて。」

わーかったわかった、と笑う声がする。

『いや、懐かしかったなって思ってさ。』

「なにが？」

『翔太。最近そんな関わってなかったから。』

…そうだね。

渡辺がどんどん力をつけ始めた頃、

それは、イケナベ・ダメナベ呼びがちらほら聞かれ始めた頃

渡辺の方が、私たちから離れていってしまった気がする。

「 …ね、深澤。」

『ん？』

「渡辺はどんな気持ちで私と組むことを受け入れたんだろう。」

昨日からずっと、それが気になっていた。

私よりずっとデキるのに

拒否することだってできたはずなのに。

" ダメナベと一緒に働くなんて。 "

そう言われる覚悟はあったのかな。

『んー…俺もわかんないけど。』

でも、と深澤は続けた。

『翔太のこと信じてもいいんじゃん？わかんないけど！』

「わかんないけどって言いすぎ。」

『だーって。わっかんないもん。』

明日2人で喧嘩すんなよ！と最後に言われ、電話を切った。

電気を消して、暗い天井を見つめる。

…そっか。明日深澤たちいないんだ。

そう考えたらなおさら緊張して

何を緊張してるのか自分でもよくわからなかったけど。

結局あまり眠れなかった。

.