だから、渡辺は好きじゃなかった。【青】 (ページ19)

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＊勝負飯はクリームパン。ページ19

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しまった！と思って隣を見ても

聞こえてしまったからにはもう遅い。

そう、私はすっかり忘れていたのだ。

朝に食べようと昨日買っておいた勝負飯(クリームパン)を食べることを。

渡辺「朝食ってないの？」

ここで嘘なんかつけなくて、恥ずかしさに負けそうになりながら小さく頷く。

信号は青になり、また走り出した車の中で渡辺に吹き出された。

もう前のトラックなんて睨んでいる余裕もなく

ひたすら顔はあげまいと手元の袖をいじる私。

するとそのうち車は速度を落とし

目的地までまっすぐのはずだった道を左に曲がった。

「 …？」

目の前にはコンビニ。

渡辺「コーヒーもお願いしまーす。」

「え？」

渡辺「その顔は何？」

「い、行きます！行ってきます！」

比較的空いていた朝のコンビニへひとっ走り。

いいの買っていってあげようと思ってホットにしたら

俺アイスコーヒーが良かったって。

なら先に言ってくれ。

渡辺「何それ、クリームパン？」

「そう。」

渡辺「好きなの？」

「好きというか、勝負飯。」

渡辺「へぇー。」

「食べる？」

渡辺「うん。」

ちぎってからあげようと袋から取り出すと

急に伸びてきた渡辺がそれにかじりついた。

「ちょっと！！」

渡辺「うわっ！これうま！」

私に何かを言う時間はまったく与えられず、車は再び走り出す。

ここ食べたら間接…

そうモヤモヤしながら渡辺を見たけど

本人は何も気にしていないらしくって

いいなー、俺もこれから勝負飯クリームパンにしよ

とかブツブツ言ってるのを見たら

なんか可愛いと思ってしまって。

私もそっと、クリームパンを口にした。

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