だから、渡辺は好きじゃなかった。【青】 (ページ13)

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＊優しい、冷たい。ページ13

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正直、1週間で他の仕事もやりながら

これを読み切るのは無理だと思ってた。

ペラペラな資料でさえまとめられない私なら、なおさら。

ドタバタの中、気付けばもうすぐその1週間が経とうとしていた。

でも。

「読みやすいね。」

渡辺「な。」

これを送ってきた阿部さんは、きっと頭がいい人なんだと思う。

ひたすら文字ばかり並ぶのではなく

途中に図が入っていたりして

阿部さんがどういうものを求めているのかよくわかる。

「私、明日には終えられそう。」

渡辺「まじ？やったじゃん。」

夕日を浴びたフロア。

逆光のせいでパソコンと睨めっこしている彼の表情はよく見えない。

「渡辺は？」

こっちを向く気配のないその横顔に問いかけると

スクロールする手を止めた渡辺がようやくこっちに顔を向けた。

…やっぱり表情、見えにくいけど。

渡辺「さっき終わった。」

「 …えー。」

思わず" 棒読み "のお手本のような返事になってしまった。

また横顔となってしまった彼。

きっとドヤ顔を浮かべていることでしょう。

…やっぱりイケナベくんには勝てないか。

渡辺「対応任せました。」

「あい。」

そんでもって " 仕方ないなぁ、俺が対応はしてやるよ "

なーんて天使が舞い降りるわけでもなく。

少し休憩！とデスクに突っ伏した私。

でも、そんな私に降ってきたのは

渡辺「涼太のところ行くけどおまえも行く？」

奢るけど。って。

反射的に行きます！と顔をあげれば

早く、と言い残して渡辺は歩いていってしまった。

先を行く渡辺を慌てて追いかける、お決まりの展開。

彼は優しいんだか冷たいんだか、未だによくわからない。

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