story 54 ページ10
俺は何も云わず立ち上がると、先程戻ってきた通路を歩き始めた。
それに続いて芥川も立ち上がると俺の後ろを着いてきた。
あー、最悪だ。 上司として恥ずかしい場面を見せちまった。
然も俺が焦って部下のことを見れてないというもの。だから余計に恥ずかしくてたまらない。
俺達はそのまま特に会話も交わさずひたすら通路を進んだ。
道中も流石に罠はあったものの、特に敵が出て来た様子はなかった。
平和だ。
唯一、気がかりに感じるのは…
…気まずい。ただそれだけだ。
この空間に流れている独特な雰囲気…
俺は歩きながら芥川の顔を目でチラチラと見るが、芥川は俺になんぞ見向きもせずひたすら前を見て歩いていた。
太〈…ねぇ、君達そんなに仲悪かったっけ?
もう少し世間話とか会話をしてみたらどうだい?
…余りに静か過ぎて通信してる私の方が退屈だよ〉
突然、耳から糞太宰の声が聞こえた。あの時のまま通信が繋がっていたのだろう。
「…あァ?うるせェよ糞太宰!俺らには俺らのやり方があンだよ!それに今は任務中だ!特に用がねェなら切るぞ」
太〈まぁまぁ、待ち給えよ。中也。実はちゃんとした理由があって君に連絡したんだけど?〉
「…ンだよ」
太宰の息を吸い込む音が聞こえた。それだけ深刻な
太〈…道に迷った〉
…は?今何つった?
道に…迷った…?
「…おい、手前もっとマシな嘘つけよ…大体、手前が道に迷うなんて話ある訳ねェだろ」
太〈…普通はそうだろうね。でも残念。現に私は今此処が何処なのかすらわからないのだよ…
そこで君にお願い。迎えに来「…巫山戯んじゃねェ
ッ!誰が手前なんか迎えに行くか!俺は死んでも行かねェ!其処でずっと居て餓死して死ね、唐変木!」
…相変わらずの口の悪さだね…でもいいよ。別に来てくれないなら、私が其方に行けばいい話なんだから〉
「はいはい、そうかよ。んじゃまァ精々待ってるぜ?
____糞唐変木」
俺はそう吐き捨てるように云うと、太宰との通信を無理矢理切った。
盛大な溜息をつく。これでもう何回目だろうか?
だが、あんなに大口を叩いたものの俺達は太宰が居ねェと何も動けない。
それはこれが任務だからだ。
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作者名:アメ玉 | 作成日時:2019年5月6日 14時