story 58 ページ15
太「…と云うことで、これで準備は整った。二人共いいね、作戦は先程説明した通りだ。
それと、この先は私の指示は無視しないこと。但し死にたくなければの話だけどね」
俺と芥川は頷くと同時に太宰はカードを穴に差し込んだ。
ピーという無機質な音の後、扉からカチッという音が聞こえた。
それが合図だった。
俺はその音が耳を掠った瞬間、瞬時に扉に蹴りを入れた。
扉は先刻のような頑丈さは無く、いとも簡単に吹っ飛んだ。
扉の向こうは更に一回り大きい空間に繋がっていた。
どうやら俺達はその空間の二階部分の扉を突き破ったらしい。
幸い、気づかれていないようだ。
素早く部屋に入り、バルコニーのようになっている正面の壁に身を隠して、一階部分を見た。
そこで見たのは、目を疑うものだった。
「おいおい、何の冗談だこりゃ…」
そこで行われていたのは、紛れも無い『人間オークション』だった。五、六名程のボロボロの服を着た人間が座らされていた。
そこにはオークションの仕切り、トランプ幹部らしき人物も何人か居た。
だが、Aの姿はそこに無かった。
『…五百万、五百万以上は居ませんか？』
次々と売られていく此奴等を見て何も行動の一つも起こせない己の無力さに、つい拳を握り締める手が強くなる。
それを見た太宰が云った。
太「…中也、君がその気持ちになるのはよく分かる。でも、この作戦が成功すれば彼等は必然的に助かる。先ずは作戦を第一に優先するんだ」
…確かに此奴の言う通りだ。
それに先刻の作戦なら上手くいけば組織ごと潰せることが出来る。
なら、俺は＿＿＿＿
「太宰、其方の状況はどうだ」
太「…此方は特に変化無しだよ。芥川君は？」
芥「僕の所も何の動きもありません」
あの後、俺達は作戦通り三人に分裂しオークションの様子を伺っていた。
通信で連絡は取っているものの、全員の顔は互いに確認出来るような位置にいる。
『…ではこれにて本日のオークションは終了させて頂きます。商品の受け渡しはこの後直ぐに行いますので、お残り下さい』
そして漸くオークションの終わりを告げる言葉が飛び出た。
漸く作戦が実行出来るかと思ったその時
？『動くな』
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作者名：アメ玉 | 作成日時：2019年5月6日 14時
