□101.夢と知りせばさめざらましを ページ21
***
夢を見ていた。
直輝が、私の頭を撫でて、ぎゅって抱きしめてくれる夢。
.
幸せ過ぎて涙がこぼれる私に、
“なんで泣くの？”って呆れたように笑いながら、
両手で頬を包まれて、親指で涙を拭われる。
そのままゆっくりと顔が近づいてきて、
キスされるのかと思って目を閉じた。
.
.
…そこで夢だと気づく。
そうだ、私は今、
直輝に優しい言葉をかけてもらえるような立場じゃないんだった。
.
昨日一日、自分が何をしていたのか全く記憶がない。
目を開けてもそこに直輝はいなくて、
やっぱり昨日も帰ってこなかったのか…、と思う。
それなのに、昨夜直輝が近くにいたような気がするのは、
あの妙にリアルに見てしまった私の夢のせいか。
.
｢……………あ…、｣
どうせ直輝から連絡なんて来るわけない、
そう思って電源を切ったまま放置していた携帯。
丸一日ぶりに充電器をさして電源を入れると、
レンからの着信履歴とメールが。
.
メールには、昨日直輝と会ったことと、
今までのことを全て説明されたうえで、
最後に一度だけ協力することなどが記されていた。
.
…そっか、直輝、昨日、レンに会ったんだ。
私には会いたくないけど、
レンには会いに行ったんだ…。
直輝から連絡があれば教えて欲しいと言ったのは私なのに、
こんな些細なことにも嫉妬してしまう私は
今本当に正常さを失っているのだと思う。
***
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年3月16日 7時
