■100.“愛おしい”の飽和状態 ページ20
***
Naoki Side
リコの催眠を解き、レンを部屋まで送り届ける。
…いよいよ明日、
俺は自分の復讐に決着をつける。
利用されていると知った上で
協力してくれた双子に“今までありがとう”と呟き、
レンの家をあとにした。
.
家に帰ったのは深夜2時をすぎてからだった。
音を立てないように玄関の扉を開け、
電気を付けずに、月明かりを頼りに彼女の姿を探すと、
自分のベットで眠っているAを発見した。
.
1日しか経っていないのに、
彼女は少し痩せたように見える。
きっと昨日から何も食べていない。
今も眠っているというより、
疲れ果てて気を失っている状態に近い。
頬にはくっきりと涙の跡があった。
自分が部屋を出ていった後、
彼女はどれくらい一人で泣いていたのだろうか。
それを思うと、心臓が潰れそうなくらい痛かった。
.
直輝｢………………ごめんね｣
.
涙の跡をなぞるように頬を撫でると、
彼女の顔が少し歪んだ。
.
｢……ぁ…、はぁ…っ、……ぁ…、な…｣
直輝｢…A…？｣
｢……っ…〜…｣
.
悪い夢でも見ているのだろうか…、
苦しそうに眉をひそめて、しゃくりをあげている。
直輝｢…A…、大丈夫だよ…。｣
｢…っ……、…は…、ぁ、｣
.
慌てて頭を撫でて優しく声をかけてやると、
次第に呼吸も落ち着いてきて、
先程よりも安らかな顔で眠りに落ちたA。
俺のせいで苦しんでいるのに、
俺の声や手一つでこんなに安心してくれるなんて。
.
こんなに愛おしいと思ってしまったら、
もう一生離れられるわけがない。
俺は布団の上から彼女の華奢な体を
ぎゅぅ〜…っと強く抱きしめた。
.
＿＿＿＿＿＿＿…全部、全部終わったら、君に伝えたいことがあるんだ。
***
□101.夢と知りせばさめざらましを→←■99.Weak point
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年3月16日 7時
