□94. Jet black ページ14
***
｢…直輝…っ…！！｣
.
ドアが開いた音を聞いて、急いで玄関に駆けつけ、
帰ってきた直輝に一目散に飛びついた。
……ああ、良かった、帰ってきた。
ひとまずこれで安心だ、
そう思ってホッとした刹那、
.
.
直輝｢……邪魔。｣
｢…え…………｣
.
“邪魔”
ポツリ、と呟かれたその言葉の発信者は、
どう考えても直輝で、
どう考えても、私に向けられた言葉。
……どう考えてもそうなんだけど、
理解できないと私の頭がエラーを起こす。
.
固まっている私の腕を振りほどいて、
スタスタと部屋の中へ入っていく直輝。
それを見てﾊｯと我に返り、彼の背中を追いかける。
.
｢…えっ…、ま、また出かける…の……？｣
直輝｢父さんを殺したのは佐島だ。
だからあんなデマな情報を神代に売ったんだ…！！｣
｢…え…ちょっと待って｣
直輝｢Aに構ってる時間はない。｣
｢…待って…！｣
.
淡々と話をする直輝に感情の色はなかった。
こんな彼今まで見たことなくて、
その冷ややかな視線に背筋がゾッとした。
.
｢…復讐なんてやめよう…？
私…、直輝に危険な目にあって欲しくないよ…｣
直輝｢Aには関係ない。｣
｢……あるの……っ…！！｣
直輝｢…どうして、｣
｢…だって私は…っ…！！｣
.
.
私は、…私は直輝のことが……、
そう言いかけた声が止まったのは、
私を見つめた彼の瞳が、
見たことないほどの漆黒に染まっていたから。
.
.
直輝｢……君は、ただの道具だ。
利用価値が無くなったらすぐに捨てる。
…分かったなら、俺の邪魔はしないでくれ。｣
***
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年3月16日 7時
