□38.檻の中 ページ38
***
｢どんな人なの？｣
直輝｢…うーん、面白い人？かな？｣
｢面白い…って、陽気な感じ？｣
直輝｢いや、それはちょっと違う。｣
.
どうやらその子は私たちと同い年の女の子で、
直輝の大学のゼミの教官である門田先生の診療を受けている【川田レン】という人らしい。
.
｢なんでその子に興味持ったの？｣
直輝｢…初めて会った時に、聞こえた気がしたんだ。
“私を檻から出して” って。｣
｢檻？｣
直輝｢うん、そっから興味持つようになって、
何度か顔合わせるうちに知り合いになって。
…あ、それとちょっとだけ、
昔のAに、似てる気がした。｣
｢えっ…、私に？｣
直輝｢そう。
だから余計に放っておけなかったのかも。｣
.
直輝が興味持つ女の子ってどんな子だろうって
気になって色々聞いていたのだが、
そんなふうに言われて、何も言えなくなる。
.
直輝｢…怖がりで泣き虫。
そのうえ警戒心が強くて、
しばらく俺にもビクビクしてたよね。｣
｢…えっ、あ、…そうだっけ…？｣
直輝｢初めて会った時、“触らないで”って怒鳴られたっけ。｣
｢あの時は…色々いっぱいいっぱいだったから…！｣
直輝｢わかってるよ。｣
｢…でも、あの時直輝に会えてなかったら、
私は今頃ここにいないし、
生きること自体諦めてたかもしれない。
…だから、……ありがとう。｣
.
裏でどんな理由があったにせよ、
私を見つけてくれたあなたには、感謝しかないの。
***
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年1月21日 0時
