□33.君の言葉は魔法みたい ページ33
***
｢…まって、映画って…｣
直輝｢ん？｣
｢…やっぱ私やめる。｣
直輝｢ダメ。｣
.
逃げようとする私のお腹に右手をぎゅっと回して、
ぐいっと隣に座らせる直輝。
.
｢嫌だ…！これ怖いやつじゃん！｣
直輝｢そんな怖くないよ？｣
｢嘘だ。｣
直輝｢ちょっとゾンビとか出てくるだけ。｣
｢…ほら！絶対やだ！！｣
.
ジタバタと身をよじって抵抗する私に、
彼から一つ提案が。
直輝｢…くっついてていいよ？｣
｢えっ、｣
.
そう言われると…、ちょっと迷う…。
なんて…、私はどんだけ単純なんだろう。
.
直輝は自分の隣をﾎﾟﾝﾎﾟﾝと叩き、おいで、と言う。
まるで吸い寄せられるようにそこに座り、
大嫌いなホラー映画を見る流れを自らつくってしまった。
ああもう…、またやられた。
彼は私の行動をコントロールするのがすこぶる得意で、
今までも何度こんなふうに丸め込まれたことか。
.
直輝｢目瞑るの禁止ね。｣
｢…ドSだ、｣
直輝｢なんとでもどうぞ。｣
｢…ぅ〜…ｯ…、｣
直輝｢ほら、始まるよ。｣
.
始まる前から泣きそうになっている私をよそに、
リモコンを手に取って再生ボタンを押してくる。
こんなの、大のホラー嫌いの私にとっては拷問でしかない…。
***
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年1月21日 0時
