【刀ミュ】３・最年少の高校生男子は秋田藤四郎になりました

27　おにぎりパワー ページ29

愛知公演


『はぁ〜っ終わりました！緊張した…』

「おつかれA お茶淹れるけど飲む？」

『頂きます』


今日も鶴丸さんとの“翼”を無事に歌い終えて楽屋に戻ってきた。
緊張と、連続で歌い続けたせいで喉がカラカラだ。

この後、客降り曲までは僕の出番はない。
同じく休憩中の宏文さん達に加わってゆっくり喉を湿した。



「そういえば、体調大丈夫？
つぅくんから調子悪かったって聞いたけど」

『ちょっと疲労が溜まってたみたいで…
でも、つばささんのお陰でばっちりです』

「病気治癒がお望みだったので」


「そっか。あんまり体冷やさないようにね」

『皆さんが色々貸してくださるので
ぬくぬくです』


おはよう、調子悪かったんだって？これ貸しとくから着ときなよ。
そんな優しさのおかげで、常に暖かく暮らしている。


『あ、そうだ。僕今日だいすき当番なんです
確認しておかないと』

「もしかしてAはじめてか。
結構緊張すると思うけどがんばってね」

『待ってください。つばささんが緊張するなら僕無理ですよ』


普段の演技を見ていて、つばささんは本番に強いと思っていたのに。
急に緊張してきた。


練習は力なり。
当番のパートを繰り返し口ずさむ。


何度目かの深呼吸のタイミングで、つばささんがひと口おにぎりを渡してきた。

混乱のうちにしっかり握りこまされる。
当の本人はそれに満足気に頷くと行ってしまった。

『どういうこと？』








・



「それじゃあ今日は、誰かに盛り上げるのを手伝ってもらおうと思います」


今剣さんの声で、舞台上が俄に騒がしくなる。
今日のだいすき当番は誰だろうか…？
お客さん達が推しに向ける視線にも自然と熱がこもった。


「我こそはと思う人は手を挙げて下さい」


「huhuhu ワタシデス」
『はいっ！』


元気よく手を挙げると、主様達の歓声が上がった。
メインステージの反対側でゆるりと手を挙げているのは、村正さんだ。



「今日は村正様と秋田さんですね
よーしっ それじゃあ行きますよ！」



「大好きだ大好きだ大好きデスよ」


村正さんが微笑むと、また更に大きな歓声が上がる。
大人の余裕というか とってもスマートだ。

レスポンスがあって、すぐに僕の番が来る。



『大好きだ 大好きだ 主君〜！』


とびきりの笑顔をカメラに向ける。
間違えなかったし、音程も外さなかった
練習とおにぎりのおかげだ。

歌い終わって歓声が聞こえたのに心底ほっとした。


『いつか君に伝えよう』

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