33 本編�� ページ36
「歴史は…？元に戻ったのか」
黒い闇は晴れ、木々の間からは青空が覗く。
静かな森の中には鳥の声が響いている
まるで初めから何事もなかったかのように
自身が貫いた大切な人の重みは、温かさは
もう手の中には残っていない。
あの方はこれから…これが正しい歴史なら
部屋の中で静かに最期の時を迎える。
『実季様っ！』
仲間達も置き去りにして、弾かれたように走り出した。
辿り着いたのはずっと見てきたあの建物
実季様の最後の場所…の窓の外だ。
「秋田君。無理に見る必要は無いんだよ」
『いいんです。僕が見届けないと』
窓から見える部屋の中には、実季様
そして、その傍らに置かれた人形が居た。
「凍蚓、茶を食べよ、食参れ」
覚えのある名を呼ぶ声にビクリと震える。
違う あれは僕じゃない
実季様は死ぬ前、自分を模した人形を彫らせ
【凍蚓】と名付けて大切にした。
それはもう、まるで生きているかのように
扱ったのだという。
「凍蚓よ。空が、何て美しいのじゃろうな」
どんどん弱々しくなる声に涙が出てくる。
せっかくの快晴も、ぼやけて見えなくなってしまった。
「凍蚓よ。最後に顔を見せてもくれぬのか」
『え…』
「お主のことじゃよ」
そんなはずは、呼んでいるはずはない。
だって僕がこの手で終わらせた。
覚えているわけっ無いのに
「窓の外であろう？分かっておるよ
入っておいで」
『！、実季様っ』
靴も脱がずに部屋の中に転がり込む
仲間たちは誰も止めなかった。
縋って、伸ばされた手を握り返す。
あぁなんて温かい。
『そんな どうして記憶がっ』
「お主ほど人に優しく接されたのは
何時ぶりだっただろうなぁ…
そんな大切な者の事、儂は忘れんよ」
実季様は優しく言った。
その口の片端が、ほんの少し吊り上がる
「勝負はお主の勝ちじゃよ凍蚓
否、秋田藤四郎か」
『気づ…いて？』
いやそれよりも
僕の事を、たった2度だけ交えた刀の事を覚えていてくれた？
『っ…勝てる訳、ないじゃないですか』
実季様は余力を振り絞り、身体を起こした。
慌てて手を回し、背中を支える。
目線が丁度同じ高さになった。
目に映るのは、真四角に切り取られた蒼
「最後にお主と出会えて良かった」
『僕もっ貴方にお会いできて幸せでした！』
僕の手を握りしめていた温もりが
力なく地面に落ちる。
『…おやすみなさい』
安らかな眠りを。
自由なからだで、あの空の向こうまで。
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愛莉(プロフ) - あんのお餅さん» あんのお餅様コメントありがとうございます。3年ぶりの祭、テンション上がりますよね！今からとても楽しみです！ (2021年11月16日 1時) (
レス) id: dbfedac61a (このIDを非表示/違反報告)
あんのお餅(プロフ) - 真剣乱舞祭、決定しましたね！ (2021年11月16日 1時) (レス) @page46 id: 436e739fd5 (このIDを非表示/違反報告)
愛莉(プロフ) - 那智さん» コメントありがとうございます！こちらこそ、この作品を読んでいただけていること感謝しております。那智様にとって素敵な一年になりますように( ´ ` *) (2020年6月9日 19時) (レス) id: 5de24330da (このIDを非表示/違反報告)
那智 - 誕生日にこの作品に出会えて感謝感激です(≧▽≦)毎日暑いので無理されませんようお気をつけ下さい (2020年6月9日 13時) (レス) id: fb12e35feb (このIDを非表示/違反報告)
愛莉(プロフ) - ヌーマイトさん» コメントありがとうございます！これからも投稿続けていきますのでよろしくお願いします (2020年5月28日 16時) (レス) id: 5de24330da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：愛莉 | 作成日時：2020年5月23日 14時
