41 大千秋楽�� ページ44
空を覆っていた暗闇が砕け散り、雲ひとつない青空が広がっていた。
間違った歴史の流れも、生きていた人たちも
全て消え去った。
ほんの少しの痕を残して
「窓の外であろう？分かっているよ
入っておいで」
『！、実季様っ』
窓から部屋の中に転がり込む。
布団に横たわる実季様には、もう先程戦った時のような覇気はない。
『そんなどうして記憶が！？』
「お主ほど人に優しく接されたのは…
何時ぶりだっただろうか
そんな大切な者の事を、儂は忘れんよ」
実季様の口角が悪戯っぽく上がる。
「勝負はお主の勝ちじゃ凍蚓
否、秋田藤四郎」
『気づいて、いたんですか？
……やっぱり勝てないなぁ』
「そうかそうか！では儂の勝ち逃げじゃ」
実季様はそう言って豪快に笑った。
その声もだんだん弱くなっていく
静かな舞台の上に、実季様が激しく咳き込む音だけが響いた。
もう終わりの時は近い
『ねえ実季様』
70回繰り返した 避けることの出来ない別れ
これも運命だと受け入れてきたけれど
『やっぱりこんなのあんまりですよ』
「…秋田くん？」
今までの公演、最終場で秋田は多くを語らなかった。
しかしここからのセリフは、今日の大千秋楽に限って大幅に変更されている。
『やっと、やっと会えたのに
またお別れするのは嫌です…！』
秋田は、僕の【秋田藤四郎】の持つ心は
空に 花に 命に揺れ動く。
それは限りなく“人間の心”だった
人は、死にゆく大切な人に想いを伝えずに
笑っていられるほど強くはない。
僕達だっておなじだ。
でも今までその想いを誰にも伝えずに来た。
だからこの言葉は、70回笑顔で隠し続けた
秋田藤四郎の弱さそのものだ。
『僕の名前を呼んでくれるのは、今ここにいる貴方だけなのにっ』
「お前には仲間も居るさ
それに、この正しい歴史でならまた会える
そんな気がしないか？」
『でも！』
「何度歴史を巡ろうと、その時までお主の名は絶対に忘れぬ。約束しよう
…さぁ儂の刀なら泣くのをやめんか」
実季様が優しく僕の頭を撫でた。
いつも以上に溢れる涙を、無理やり拭って笑って見せる。
『僕、もっと強くなって会いに行きます』
「ああ 待っておるぞ」
「秋田藤四郎
最後にお前と出会えて良かった」
『僕も貴方にお会いできて…っ幸せでした』
実季様の手が力なく地面に落ちる。
『おやすみなさい…またいつか』
涙は止まらないけれど、満面に笑み浮かべて空を見上げた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 266人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
愛莉(プロフ) - あんのお餅さん» あんのお餅様コメントありがとうございます。3年ぶりの祭、テンション上がりますよね！今からとても楽しみです！ (2021年11月16日 1時) (
レス) id: dbfedac61a (このIDを非表示/違反報告)
あんのお餅(プロフ) - 真剣乱舞祭、決定しましたね！ (2021年11月16日 1時) (レス) @page46 id: 436e739fd5 (このIDを非表示/違反報告)
愛莉(プロフ) - 那智さん» コメントありがとうございます！こちらこそ、この作品を読んでいただけていること感謝しております。那智様にとって素敵な一年になりますように( ´ ` *) (2020年6月9日 19時) (レス) id: 5de24330da (このIDを非表示/違反報告)
那智 - 誕生日にこの作品に出会えて感謝感激です(≧▽≦)毎日暑いので無理されませんようお気をつけ下さい (2020年6月9日 13時) (レス) id: fb12e35feb (このIDを非表示/違反報告)
愛莉(プロフ) - ヌーマイトさん» コメントありがとうございます！これからも投稿続けていきますのでよろしくお願いします (2020年5月28日 16時) (レス) id: 5de24330da (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：愛莉 | 作成日時：2020年5月23日 14時
