恋慕:kwmr◎request ページ11
リクエスト:文豪とその侍女
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「失礼致します。お食事のご用意が出来ましたが、如何なさいますか?」
「あぁ、今食べてしまうよ、すぐに行く」
「畏まりました」
彼、河村先生のお屋敷でお世話になり始めてからはや数年。
彼の描く情景が、彼が紡ぐ言葉がずっと好きだった。
丁寧で大胆、退廃的で道徳的。
初めて著書を読んだときのあの感動は忘れることはないだろう。
そして、彼本人を一目見たときのあの美しさも。
食事も終わり皆が寝静まる夜、廊下を通り掛かると、この時間には珍しく彼の部屋の障子が開き灯りが漏れている。
「拓哉さん、」
声を掛けるものの返事は無く、隙間からそっと中を覗くと動かない彼が机の前に座っていた。
「失礼します…、拓哉さん…?」
不思議に思い中まで足を踏み入れるが、彼は机に身体を預けて既に眠りについており、その下には書き掛けの原稿が残されていた。
「寝てる…」
秋の入りで寒くなる時期、薄着のままでは寒かろうと、近くにあった羽織をそっと肩に掛けた。
ふと見える、夜の影と淡い光の加減で普段以上に美しいその顔をつい見つめてしまう。
無意識に触れようとした手を寸でのところで止め、おやすみなさい、と声を掛けて腰を上げる。
「、…待って」
「えっ、」
「ここにいて、」
「は、はい…」
翻りかけた着物の裾が弱々しく握り締められる。
引き止めたまま動かなかった彼が顔を上げたのは、行燈の中の蝋が幾分短くなった頃だった。
「…少し、寝てしまっていたようだね」
「そのようですね」
「わざわざ来てくれたのかい?」
「この時間に灯りが点いたままでしたので、どうかなさったのかと…」
「そう…有難う、A」
「いえ、お気になさらないでください」
その言葉の後、考え込むようにまたひとつ間が開いてから、彼は真剣な顔で話し出した。
「次の作品には、Aを登場させているんだよ」
「えっ」
「でも主人公は君じゃない、冴えない男なんだけどね、」
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キタ(プロフ) - あんころさん» ありがとうございます!キャラが定まってない感じもありますが大丈夫でしたでしょうか…?どうしても不定期になってしまいますが、更新の予定はありますのでまたよろしくお願いします(*^^*) (2020年4月6日 1時) (レス) id: 287acd08f7 (このIDを非表示/違反報告)
あんころ - kwmrさんだいすき人間なのですが、どれも好みどストライクでもう…!!!キタさんのペースで頑張ってください!応援しています!! (2020年4月2日 2時) (レス) id: 4b7a069960 (このIDを非表示/違反報告)
キタ(プロフ) - ぽさん» お返事遅くなってしまってすみません!一作目からありがとうございます。更新も不定期ですが、なんとかご期待に応えられるように頑張りますので、今後もよろしくお願いします。 (2019年12月9日 21時) (レス) id: 287acd08f7 (このIDを非表示/違反報告)
ぽ(プロフ) - キタさんお久しぶりです><「平凡、即ち人生」がドストライクすぎました、、!!キタさんの書く文章が大好きです:-)これからも応援しています。 (2019年12月5日 20時) (レス) id: 7700f16782 (このIDを非表示/違反報告)
キタ(プロフ) - ちるさん» コメントありがとうございます。沢山のお褒めの言葉をいただけてとても嬉しいです。マイペースにはなりますが、色々と更新していきたいと思います。今後もよろしくお願いします! (2019年10月31日 23時) (レス) id: 287acd08f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キタ | 作成日時:2019年10月29日 14時