ナイスガイ:その距離、2cm。 ページ10
『わぁあ、雨降ったぁ！？』
窓の外をふと見やると、大粒の雨が窓をたたいていた。
朝のニュース番組の天気予報士は満面の笑みで
「今日は1日中晴れるでしょう」
と言っていたのに、その予報は大外れ。
これ以上ないくらいに大雨だ。
友達に貸した折りたたみ傘は未だ返ってきてないし、持ち歩いているビニール傘は先週から行方不明だった。
『ツイてない…運が無いよ』
それはしょうがないか、と諦める。
先週、席替えがあった。それが原因だろう。
そこで私の今まで生きてきた中で最大の幸運が訪れた。
「おーっす、おはよう、あれ、こんにちはかな？」
と満面の笑みで入ってきたこの人。
最大の幸運にして、私の運を使い果たした原因であるところのこの人。
その人はふらりと山本さんのデスクに寄った後、私のデスクに近づいた。
そして、隣に座る。
そう。デスクの席替えで隣になった。
幸運すぎるにも程がある。
この太陽のような笑顔を振り撒く彼を、合法的に見ることが出来る。
突然伊沢さんが「席替えしよう！」と言い出した時びっくりした。
今まで福良さんの隣で、何か不満があるわけじゃなかった。
むしろ聞きたいことをすぐに聞けるから案外便利で。
でも須貝さんからは果てしなく遠かった。
特に話すタイミングがないと近寄れない。
その隣で楽しそうに笑う山本さんをみて、嫉妬していたのは言うまでもない。
「おはよう」
この笑顔が見られるだけで十分だ。
だけど、雨は不足の事態じゃない？
さっきまで見つめていた雨の降る窓は、その手前に座る須貝さんによって隠された。
「雨、すごいね。傘持ってきた？」
突然話しかけられて、びっくりした、というより心臓が跳ね上がった。
先週からいつもこう。
まだ須貝さんに話しかけられるのが慣れてなくてビックリする。
『いえ…傘、行方不明なんです』
「行方不明！？そりゃまたなんで？」
口下手な私の説明を、頬を緩ませて聞いてくれている。
程よい相槌がお喋りを楽しくせてくれる。
『…と、いうことでして』
「ふふっw案外お喋りなんだねAさん」
笑顔にうっとりしかけて我に帰る。
問題は須貝さんの笑顔、ではなく、どうやって帰るかである。
走って帰るか、鞄を緊急の傘にして…
なんて考えていると一向に仕事は進まないのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 166人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
絹田きぬた(プロフ) - いろさん» よろしく…！私もきぬちゃん呼びは初めて！w (2020年8月17日 14時) (
レス) id: 6912973321 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - 絹田きぬたさん» いーちゃん！！？初めて呼ばれます！！めちゃめちゃ嬉しいです…！！大歓迎です！！よろしくね…！！ (2020年8月17日 14時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
絹田きぬた(プロフ) - いろさん» いえいえ！え！？わざわざ買ってくださったんですか！？それは…本当にありがとうございます！私、とても好きなお話なので嬉しいです！タメ！いいですね！私もいーちゃんとか呼んでもいいですか？ (2020年8月17日 14時) (レス) id: 6912973321 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - 前の作品にごめんなさい！これだけ伝えたいことがありまして！！きぬたさんの夢十夜を理解するためだけに本を買いました()まだ読めてないのですが… あ、あと、もしきぬたさんが良ければ、タメとかどうでしょうか…(きぬちゃんと呼びたい欲を抑えきれず…) (2020年8月17日 13時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
絹田きぬた(プロフ) - 葉月さん» そうですね、やっぱり締めはCEO！ありがとうございます…不安定な状態が続いてるので、ゆっくり頑張っていきますね！新作もよろしくお願いします！ (2020年6月20日 16時) (レス) id: 6912973321 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：絹田きぬた | 作者ホームページ：
作成日時：2020年5月15日 20時
