↑「九夜」 ページ39
コーヒーを飲み終えた彼を見つめる。
「そういえば、行きたいところがあるんだ」
思い出したように私にそう言った。
私は二つ返事で頷いた。
『どこ？』
「行けばわかる」
とだけ彼は言って私の腕を引いた。
そして、部屋の外に出た瞬間強風が吹き付けた。
外に出ると、そこには大きな神社が目の前にデンとそびえ立っていた。
神社の鳥居が月明かりに反射し、さらに濃い赤に変化している。
彼は私の手を繋いだまま、鳥居を駆け抜けた。
もちろん、道の端っこを。
道の真ん中にかかる橋を渡った。
橋には、フクロウが2、3匹止まっていた。
フクロウが、甲高く鳴いてバサバサと飛び立った。
そこで、彼の色素がどんどん薄くなっていることに気づいた。
『大丈夫？』
「うん」
彼は頭をかいて、もどかしそうに私を見つめた。
「君がため、惜しからざりし、命さへ、長くもがなと、思ひぬるかな」
(あなたに逢うためなら、死んでも惜しくないと思っていた命ですが、
あなたに逢えた今では、いつまでも長くあって欲しいと思うようになったものです。)
博識な貴方ならではの、愛の言葉。
何より嬉しい愛の言葉。
繋いだ手が薄れてきた。
感覚も指先から無くなっていく。
でも、しっかりと掴んだ。
そこにあるであろう指を。
消えていく。
貴方の体が消えていく。
貴方の存在が消えていく。
『大好き』
最後に頬に触れると、彼も憂いを帯びた表情で私の頬に触れた。
もうない指が、温かかった。
もうそこには塵すら残っていない。
こぼれた涙が、ポトリ、と落ちた。
風が吹いてきた。
銀杏のキツい香りがする。
気づくと私は、階段を何度も登って降りて、手を合わせて。
ひたすらそれを何十回も繰り返していた。
何十回も繰り返して、足も棒になって、もう動かないといったいった頃に。
やっと100度目のお参りが済んだのだ。
済んだ頃に目が覚めた。
月光の美しい夜だ。
まだ夜が明けてない。
『思ひつつ、寝ればや人の、見えつらむ、夢と知りせば、覚めざらましを』
返歌はこれがぴったりだと思った。
(想いながら寝たから、あの人が夢に出てきたのでしょう。
もし、それが夢だと知っていたなら、目を覚ましたりはしなかったのに)
最期に別れを告げに来てくれた彼に。
彼がいなくなってから、丁度四十九日目の夜だった。
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絹田きぬた(プロフ) - いろさん» よろしく…！私もきぬちゃん呼びは初めて！w (2020年8月17日 14時) (
レス) id: 6912973321 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - 絹田きぬたさん» いーちゃん！！？初めて呼ばれます！！めちゃめちゃ嬉しいです…！！大歓迎です！！よろしくね…！！ (2020年8月17日 14時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
絹田きぬた(プロフ) - いろさん» いえいえ！え！？わざわざ買ってくださったんですか！？それは…本当にありがとうございます！私、とても好きなお話なので嬉しいです！タメ！いいですね！私もいーちゃんとか呼んでもいいですか？ (2020年8月17日 14時) (レス) id: 6912973321 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - 前の作品にごめんなさい！これだけ伝えたいことがありまして！！きぬたさんの夢十夜を理解するためだけに本を買いました()まだ読めてないのですが… あ、あと、もしきぬたさんが良ければ、タメとかどうでしょうか…(きぬちゃんと呼びたい欲を抑えきれず…) (2020年8月17日 13時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
絹田きぬた(プロフ) - 葉月さん» そうですね、やっぱり締めはCEO！ありがとうございます…不安定な状態が続いてるので、ゆっくり頑張っていきますね！新作もよろしくお願いします！ (2020年6月20日 16時) (レス) id: 6912973321 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絹田きぬた | 作者ホームページ：
作成日時：2020年5月15日 20時
