「一夜」 ページ24
河村の声が遠くなる。
そのかわり、鳥のさえずりが脳内に響き渡った。
目覚めると森の中にいた。
切り株に突っ伏して寝ていたらしい。
首が痛い。
寝違えたかもしれない。
『ここどこだろう』
ボワンボワンと声が響く。
まだ夢の中にいるみたいな感じ。
なんだろう、これ。
時間の感覚も、もう何も分からない。
切り株に座って、足を組んで、ぼーっと肘をついて、木の間から登る日を見つめていた。
柔らかく浅い日差しが木々の間から一直線に差し込む。
『朝かなぁ』
何も考えないで、日を見つめていた。
ふと、手の中に眼鏡を持ってることに気づいた。
『何、これ。』
黒縁の眼鏡。
それを日にかざすと、キラリと反射する。
『綺麗。』
笑みが浮かんだ。
河村、来ないじゃん。
あれ…河村って誰だっけ。
名前は知ってんのに。
誰だかわかんない。
それを考えてる間に、日が登って沈んで。
何度もそれが繰り返されて、私はそれをずっと見つめている。
その時間は無限だった。
無限のようにも感じられた。
私はその間、河村の事を考えていた。
どんな奴だったか。
切り株も少し成長した。
草も伸びた。
私は歳を取らなかった。
そして何千回目、何万回か。
日が沈み込んで。
あたりが真っ暗になった。
日がまた登った。
何千、何万回繰り返しても眩しい朝日。
肩を叩かれた。
「おはよう。ほら、すぐでしょ。」
『河村。』
あぁ、そうだった。
こいつが河村だ。
口に出して初めて、河村なのだと思いついた。
「うん、そう。」
河村が笑ったと同時に蔦が伸びてきた。
それが私の頭をグイッと彼に近づける。
『おはよう。長かったよ』
「僕は短かった」
彼の顔に眼鏡をかける。
眼鏡のない顔は彫刻みたいだったけど、眼鏡をかけると人間味が増した。
「今度は僕が引いてあげる」
腕が引かれた。
彼の胸に飛び込んだ形になる。
彼の匂いが鼻の奥いっぱいに頭が眩むほど香る。
『待ってたよ。もう来ないと思った』
「僕のこと忘れてたでしょ」
『忘れてないよ。』
「知ってるんだから。」
知っているなら、嘘ついてもしょうがない。
軽く笑うと、そのそばに口づけされた。
「百年待ってくれてありがとう」
そうなのか。
百年河村のことを待ったのか。
「大好き」
白い肌に赤色がさした。
手が触れて、また影が重なった。
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絹田きぬた(プロフ) - いろさん» よろしく…！私もきぬちゃん呼びは初めて！w (2020年8月17日 14時) (
レス) id: 6912973321 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - 絹田きぬたさん» いーちゃん！！？初めて呼ばれます！！めちゃめちゃ嬉しいです…！！大歓迎です！！よろしくね…！！ (2020年8月17日 14時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
絹田きぬた(プロフ) - いろさん» いえいえ！え！？わざわざ買ってくださったんですか！？それは…本当にありがとうございます！私、とても好きなお話なので嬉しいです！タメ！いいですね！私もいーちゃんとか呼んでもいいですか？ (2020年8月17日 14時) (レス) id: 6912973321 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - 前の作品にごめんなさい！これだけ伝えたいことがありまして！！きぬたさんの夢十夜を理解するためだけに本を買いました()まだ読めてないのですが… あ、あと、もしきぬたさんが良ければ、タメとかどうでしょうか…(きぬちゃんと呼びたい欲を抑えきれず…) (2020年8月17日 13時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
絹田きぬた(プロフ) - 葉月さん» そうですね、やっぱり締めはCEO！ありがとうございます…不安定な状態が続いてるので、ゆっくり頑張っていきますね！新作もよろしくお願いします！ (2020年6月20日 16時) (レス) id: 6912973321 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絹田きぬた | 作者ホームページ：
作成日時：2020年5月15日 20時
