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『おはよう、ゼン』
「…ああ、おはよう。A。」
食堂へ行くと、そこには服だけはしっかりと着替えてあるゼンとそのそばに立つミツヒデたちがいた。
『ゼン、眠そうだね。』
「いつものことだけどな」
「そうだね」
「お前ら…間違ってはいないがっ…。…はぁ、まあいい。お前たちも早く席に着け」
寝起きで頭がまわらないのか、ゼンは言い返すことをやめてしまったようだ。
ゼンの言葉通り、私たちが席につくと次々と色鮮やかな朝食が運ばれてきた。
「それに、今Aを目の前にして、もっと寝たいなどというのはまた違う気がするしな。」
こちらを見て微笑みながらそう言ったゼンに、私も微笑み返す。
間接的な言葉だが、きっと昨日のことを気にしてくれているんだろう。こういう小さな気遣いができるところがさすがゼンといったところか、ゼンらしいというか。
「ゼン、今日は昨日の分も含め終わらせてもらうからな。」
「……………」
『それが終わればまた脱走していいってさ』
「おい!A!」
「いいね、執務が終わればまた脱走できるよ。ゼン。」
「いや待て、それはもはや脱走と言わないんじゃないか…?」
「んー確かにそうだな。…っておい!そうじゃなくてだな!」
私たち3人は知っている。ゼンが何故、そんなにも頻繁に城の外へ出向くのか。
それは、ゼンは自分の眼で城の外を見ることを大切にしているから。これは私とゼンが出会ったときからずっとそうだ。
『頑張ろう、ゼン。今日は私も手伝うからさ!』
出会ったときからずっと。───そう、あのときから。私はゼンに忠誠を誓い、命をかけてこの方の役に立つと誓った。
「ああ、そうだな。昼までには終わらすぞ。」
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作者名:汐崎 | 作成日時:2023年1月14日 16時