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ページ8

『花束…ですか?』

『ああ』

『勿論です。どんな方にですか?』





降谷は、手に持つそれをそのまま片手で赤井へと差し出した。
差し出すというよりは突き出したという言葉の方が似合う、まさか花束を贈っている様には見えない程ぶっきらぼうな渡し方だ。

立ち尽くす赤井に、眉を顰めしびれを切らした降谷は、”早く取れ”と言わんばかりに差し出した手を、花束ごと2回揺らした。
それでも赤井は呆気に取られたままだ。

「おい」

降谷はすぐにでも花束を赤井の元へ放り投げたかった。
指先がピクリと動いたが、寸での所で思い留まる。
最愛の妻(予定)の作った花束だ。
それを投げ渡しただなんて知れたら。
それ以前に、Aが一生懸命考え、時間を掛けて作ってくれた花束だ。
投げるだなんてとんでもない、そんなの他でもない自分が許さない。

未だ唖然とする赤井の元へ、降谷は歩を進めた。
赤井の鼻先へ、ブンと音のする様な勢いで花束を突き付けると、漸く赤井はそれを受け取った。
受け取ったというよりは、訳も分からないまま反射で手に取った、という方が正しいかもしれない。

赤井が手にしたのは、赤より柔らかく、けれど上品な濃いピンクの花束だ。


「ゼラニウムっていう花らしい。」


手に収まった小振りの花束を見つめるばかりで、尚も赤井は口を開くこともなければ、身じろぐ事もない。


「お前は、いつまでも過去(そこ)で立ち止まるか?」


まるで挑発するかの様な降谷の言い方は、今まで接してきた、赤井が知る降谷そのものだった。
聞き覚えのあるその抑揚に、漸く赤井は身体の硬直が解けた気がした。

花束から顔をあげると、降谷は得意げな顔で笑っていた。
今日の彼はよく笑う、と赤井は頭の片隅で思った。
あの頃より、瞳は柔らかい。
けれどその姿は、一見すると優男で、勝気で、いけ好かなくて、誇らしげで、

「俺は未来(さき)に行くぞ。」

誰よりも祖国を思い
共に戦い続けた
赤井のよく知る降谷零の姿だった。









『どんな方にですか?』

『え。いや、適当で良い、任せる。』

『どんな方ですか?』

『う……』

『何も言わないなら、真っ赤な薔薇12本で作ります。』

『それはやめてくれ…』




【ゼラニウム:尊敬、信頼、真の友情】
【ゼラニウム(赤):君ありて幸福】

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コハク(プロフ) - ハロウィンの花嫁を視聴後、愛を込めて花束ををまた読み返したくなりました!相変わらず最高で、お腹いっぱいになっちゃいました!!これからもまた読み返しにきます!投稿ありがとうございます! (2022年4月30日 2時) (レス) id: 7f6bf31979 (このIDを非表示/違反報告)
ミー(プロフ) - コメント失礼します。エンドラインの向こう側3,4のパスワードを教えていただきたいです。どこで聞いたらいいか分からなかったため、ここで書かせて頂きました。途中まで読んでいたのでとても気になります!よろしければお願いします。 (2022年2月13日 23時) (レス) id: 3b44c51b75 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はじめまして。エンドラインの向こう側のパスワードを教えていただきたいのですがどこから申請すれば良いか分からずここのコメントに書かせていただきました。よろしければパスワード教えていただきたいです。よろしくお願いします (2021年11月19日 17時) (レス) id: 88d70f8178 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりょ - はじめまして。とても楽しく読ませていただきました。赤井さんとのお墓での会話、ヒロの死の真相を知った降谷さん...もう涙を流しながら読みました。原作もこのような雪解けをして欲しいと思ってしまいます。でもひとつだけ『起用歴』ではなく『既往歴』です。 (2020年9月1日 0時) (レス) id: 63d61d9800 (このIDを非表示/違反報告)
真夏 - 虎鉄(DC一時お休み中)さん» お知らせしてくださってありがとうございます!今気づきました!!早速読んできたいと思います!とっても嬉しいです!!ありがとうございます! (2020年6月13日 17時) (レス) id: ff5b67d1bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年7月29日 11時

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