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ページ30

「出来上がるまで後5分ってとこかな。
食べられそう?」

「はい。」







降谷の必死の弁解は空振りに終わった。
なぜなら、Aが叫んだ理由は意外なものだったからだ。

『そんなお手数をお掛けして、いや、零さんにそんな事させてしまって本当に申し訳ありませんー…っ‼‼』

と病み上がりの体(まだ熱はある)で土下座並みの勢いを見せたものだから、降谷の目は点になった。
羞恥心が云々ではない、降谷に”着替えさせる”というとんでもない迷惑をかけた事に彼女は叫び声をあげたのだ


違う、そういう事じゃない。

『ホラ、そういうとこ』

『え』

『俺はあの店の常連客止まりなのか?
俺は、君の”婚約者”のつもりなんだけど。
違った?』

と徐々に、降谷に火が点き始める。

『違わない、です。』

『ちなみに、いつから具合悪いって自覚した?』

熱が出てからの記憶はぼんやりとしかないだろうが、その前は別だ。

『買い出しが終わって、仕込みし始めた位、です。』

降谷は決して尋問するつもりはないが、降谷の声がいつもより若干低い事にAは気付いていない。

『ふーん…、じゃあ俺が連絡した時には既に具合悪いって分かってたんだよな?』

『あ…』

桜木Aは芯の強い女性だ。
降谷も異論はない。
けれど

『確かに”虫が出た、退治して欲しい”とかって些細な理由で帰る様に言われたらそりゃ困るけど』

『虫は自分で対処します。』

『ああ、うん、有難い。
でも、例え話だからな。
家に居る時は俺がやるし…じゃなくて』

『?…はい』

『風邪の時くらいは、俺を頼ってくれ。
いや、風邪の時じゃなくても。』

『……』

『今回は特に、気が気じゃなかったよ。
それに…後から知った方が悲しい。』

『……ごめんなさい。』

『うん。』

『ありがとう。』

『うん、よろしい。』

降谷は、今日何度目かの頭を撫でると、香りの立つキッチンへと戻っていった。



不満は、ない事もない。
が、これからたっぷり時間はある。

少しずつ、少しずつ自覚させるから

黙って俺に愛されてくれ









二人の間に流れた気まずい空気とぎこちなさはすっかりなくなった。

もくもくと白い湯気の下には

「あ…」

『お袋の味と言えるのは、風邪を引く度に作ってくれた卵粥くらいですかね』

懐かしい思い出の味

”君を頼った日” END.→←ー



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コハク(プロフ) - ハロウィンの花嫁を視聴後、愛を込めて花束ををまた読み返したくなりました!相変わらず最高で、お腹いっぱいになっちゃいました!!これからもまた読み返しにきます!投稿ありがとうございます! (2022年4月30日 2時) (レス) id: 7f6bf31979 (このIDを非表示/違反報告)
ミー(プロフ) - コメント失礼します。エンドラインの向こう側3,4のパスワードを教えていただきたいです。どこで聞いたらいいか分からなかったため、ここで書かせて頂きました。途中まで読んでいたのでとても気になります!よろしければお願いします。 (2022年2月13日 23時) (レス) id: 3b44c51b75 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はじめまして。エンドラインの向こう側のパスワードを教えていただきたいのですがどこから申請すれば良いか分からずここのコメントに書かせていただきました。よろしければパスワード教えていただきたいです。よろしくお願いします (2021年11月19日 17時) (レス) id: 88d70f8178 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりょ - はじめまして。とても楽しく読ませていただきました。赤井さんとのお墓での会話、ヒロの死の真相を知った降谷さん...もう涙を流しながら読みました。原作もこのような雪解けをして欲しいと思ってしまいます。でもひとつだけ『起用歴』ではなく『既往歴』です。 (2020年9月1日 0時) (レス) id: 63d61d9800 (このIDを非表示/違反報告)
真夏 - 虎鉄(DC一時お休み中)さん» お知らせしてくださってありがとうございます!今気づきました!!早速読んできたいと思います!とっても嬉しいです!!ありがとうございます! (2020年6月13日 17時) (レス) id: ff5b67d1bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年7月29日 11時

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