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背後から聞こえたセリフに、降谷の足はピタリと動きを止めた。
ギギギと効果音が付きそうな程に、ゆっくりと降谷は振り返る。
溜息をつきながらAの元へ戻ると、Aは”何か変な事を言っただろうか”とキョトンとした顔で首を傾げていた。

「病人を放って仕事に行くほど僕は薄情な人間じゃないつもりだけど。
貴女に僕はそう見えてますか。」

ズイッと近づいた顔に、思わずAは顔を引いた。

「見えません…けど、でも…」
(口調が安室さん…、拗ねてる…?)

「大丈夫、俺には優秀な部下が居る。
抱えてた案件も区切りがついたばかりだし、有給消化しろと丁度上からせっつかれてたんだ。
それに…」

降谷はぽんとAの頭に手の平を乗せ、少し困った様な笑みを浮かべて言った。

「俺が一緒に居たいんだ。
日頃あまり一緒に居られない分、俺に甘やかされてくれ。」

「え…甘やかされ…?」

「駄目?」

「駄目、じゃないです…」

ぼんやりとする頭のせいか、Aは降谷の言葉をそのまま繰り返した。
少し下がった筈の熱が再び顔を熱くする。

「あと、自分の価値を見誤らないでくれ。」

「みあやまる…」

「自分がどれだけ俺に愛されてるか自覚してってこと。」

噛み砕かれた降谷の言葉に、ますますAの顔は熱を帯びていく。
けれど至近距離にある降谷の瞳は、Aを逃さない。

「分かった?」

「…分かった、です。」

頭があまり回っていないのだろう。
いつもよりテンポの遅い会話と謎の敬語に、降谷は笑いながらAの髪をぐしゃぐしゃと撫で回すと、同時に立ち上がった。

「って事で、まずは薬飲むために何か作って来るから、大人しくそこで待ってること。
そこにあるアク○リで水分補給も忘れないこと。」

「はい…」

ビシっと人差し指を立てた降谷は今度こそ、寝室を出てキッチンへと向かっていった。

残されたAは言われた通りにベッド横にあったボトルを手に取る。
大して力を入れずとも、ペットボトルのキャップはすんなりと回った。

「開けておいてくれたんだ…」

さりげない降谷の優しさに、Aの頬は緩んだ。
常温に戻されたそれを二口ほど口にして、Aは大人しく降谷を待とうと、緩む頬を隠す様に掛け布団を顔まで引き上げた。






着衣の違和感に気付き、掛け布団を捲ったAが、辿り着いた恥ずかしい答えに叫ぶまで

そんなAの悲鳴を聞きつけ血相を変えた降谷が、おたまを持って寝室に現れるまで



あと少し

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コハク(プロフ) - ハロウィンの花嫁を視聴後、愛を込めて花束ををまた読み返したくなりました!相変わらず最高で、お腹いっぱいになっちゃいました!!これからもまた読み返しにきます!投稿ありがとうございます! (2022年4月30日 2時) (レス) id: 7f6bf31979 (このIDを非表示/違反報告)
ミー(プロフ) - コメント失礼します。エンドラインの向こう側3,4のパスワードを教えていただきたいです。どこで聞いたらいいか分からなかったため、ここで書かせて頂きました。途中まで読んでいたのでとても気になります!よろしければお願いします。 (2022年2月13日 23時) (レス) id: 3b44c51b75 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はじめまして。エンドラインの向こう側のパスワードを教えていただきたいのですがどこから申請すれば良いか分からずここのコメントに書かせていただきました。よろしければパスワード教えていただきたいです。よろしくお願いします (2021年11月19日 17時) (レス) id: 88d70f8178 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりょ - はじめまして。とても楽しく読ませていただきました。赤井さんとのお墓での会話、ヒロの死の真相を知った降谷さん...もう涙を流しながら読みました。原作もこのような雪解けをして欲しいと思ってしまいます。でもひとつだけ『起用歴』ではなく『既往歴』です。 (2020年9月1日 0時) (レス) id: 63d61d9800 (このIDを非表示/違反報告)
真夏 - 虎鉄(DC一時お休み中)さん» お知らせしてくださってありがとうございます!今気づきました!!早速読んできたいと思います!とっても嬉しいです!!ありがとうございます! (2020年6月13日 17時) (レス) id: ff5b67d1bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年7月29日 11時

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