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【もし起こしたらごめん。仕事片付けたから今からAの家に寄る。】

後は送信するだけ、というところだった。
けれど降谷は送信キーではなく、スマホキーボードの右上を3回タップし、新たな単語をフリックした。

【もし起こしたらごめん。仕事片付けたから今からAの家に帰る。】








返信もなければ、メッセージの横に既読の文字がつくことはなかった。

(やはり寝てるか…)

『おかえりなさい。今日はちょっと冒険してイタリアに行ってみましたー!』

玄関で満開の笑顔のAが出迎えてくれる、数少ない機会が降谷の密かな楽しみだ。
エプロンだと尚更。
疲れた降谷を癒す料理の数々は、大概が夜遅い事や次の日の事を考慮し、消化に良さそうな和食が多い。
降谷は日本という国はもちろん、それに付随する繊細な和食が大好きだ。
けれど極たまに、早く帰れる事が前もって予告出来た時に振舞われる、異国料理もまた、降谷の密かな楽しみだ。
別に店で余ったものでも構わない、というのに

『零さんは特別ですから。』

トドメとばかりに無意識に降谷のハートを殺しにくるからタチが悪い。

(寝顔も良いけど、そうか、寝てるか…残念。)







遠目から見ても、カーテン越しにでも、Aの部屋が真っ暗なのがわかった。
少し早足で、Aの部屋へ向かう。
予め貰っていたスペアで開錠しても、温もりの気配はなく、部屋は沈黙に包まれている。
こじんまりとしたAの部屋は歩き回らずとも、大体が見渡せる。
部屋の中では唯一、寝室だけがドアで仕切られている。

「A…?」

そっとノブを回し、覗いてみても人の居る気配はなかった。
ベッドシーツもきちんと整理されたままだ。

「居ない…?一体どこに…」

Aの店が無人なのは、来る途中に既に確認済だ。
スマートフォンを取り出し、電話をかけてみても延々とコール音が鳴るだけだ。

「まさか、何か事件にでも…?」





徒歩では何かと動き辛いと判断した降谷は一旦、車を取りに向かう事にした。

「A…?」

向かった自宅。
玄関にあるAの靴を見て、降谷は気の抜けた様な声でぽそりと彼女の名前を呼んだ。
いつも綺麗に揃えられている彼女の靴は、脱いだそのままの状態だ。

恐る恐る部屋の中に入る。
風呂場、トイレ、キッチン、リビング、バルコニーそのどこにも姿はない。
残るは降谷が仕事で使用する書斎と、寝室だけだ。

そろりと寝室を覗くと、ベッドがこんもりと山を作っていた。

ー→←番外編リク”君を頼った日”



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コハク(プロフ) - ハロウィンの花嫁を視聴後、愛を込めて花束ををまた読み返したくなりました!相変わらず最高で、お腹いっぱいになっちゃいました!!これからもまた読み返しにきます!投稿ありがとうございます! (2022年4月30日 2時) (レス) id: 7f6bf31979 (このIDを非表示/違反報告)
ミー(プロフ) - コメント失礼します。エンドラインの向こう側3,4のパスワードを教えていただきたいです。どこで聞いたらいいか分からなかったため、ここで書かせて頂きました。途中まで読んでいたのでとても気になります!よろしければお願いします。 (2022年2月13日 23時) (レス) id: 3b44c51b75 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はじめまして。エンドラインの向こう側のパスワードを教えていただきたいのですがどこから申請すれば良いか分からずここのコメントに書かせていただきました。よろしければパスワード教えていただきたいです。よろしくお願いします (2021年11月19日 17時) (レス) id: 88d70f8178 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりょ - はじめまして。とても楽しく読ませていただきました。赤井さんとのお墓での会話、ヒロの死の真相を知った降谷さん...もう涙を流しながら読みました。原作もこのような雪解けをして欲しいと思ってしまいます。でもひとつだけ『起用歴』ではなく『既往歴』です。 (2020年9月1日 0時) (レス) id: 63d61d9800 (このIDを非表示/違反報告)
真夏 - 虎鉄(DC一時お休み中)さん» お知らせしてくださってありがとうございます!今気づきました!!早速読んできたいと思います!とっても嬉しいです!!ありがとうございます! (2020年6月13日 17時) (レス) id: ff5b67d1bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年7月29日 11時

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