11話 ページ18
あれからまた数日が経った。
あの温かかった空間も、心地良かった時間も、夢だったのではないかと思える程、降谷は以前の様な生活に戻っていた。
時刻は22:45
普段から時間の概念なんてあって無い様な職場に居る降谷には、この時間に帰宅の途につけている事が、早いのか遅いのかもうよく分からない。
ここ数日は根を詰めて職務を全うしたせいか、身体は正直に疲労を訴えている。
自宅はまだ見えてこない。
気が逸る降谷は、ネクタイを緩めようと首元に手を掛けた。
数m先に、曲がり角が見える。
その角を曲がれば、あの店がある。
曲がらずに直進すれば、数分で家が見えてくる。
降谷の気付かぬ内に、自然と降谷の歩みは遅くなっていた。
すると、千鳥足の2人組の男がまさにその曲がり角から現れ、降谷の方へ歩いてくる。
降谷にはその2人組に見覚えがあった。
「いやー‼でもAちゃん元気になって良かったなぁ、菊池さん。」
(……何?)
その言葉を聞いて降谷の足は完全に動きを止めた。
2人組は、前に見た時よりは足取りも言動もしっかりしている様だが、それでも酔いの回った頭では降谷が歩みを止めた事など気付きもしない。
「あぁ…シメにAちゃんのご飯食べたくなって、電気付いてるから駄目元でお店覗いたら…ありゃたまげたね。
まさか倒れてるなんて思わなんだ…。
一気に酔いも冷めて、俺ァ、初めてレスキュー呼んだよ。」
「菊池さん、レスキューじゃなくて救急車ね。」
前に見た彼等なら、その後顔を見合わせてガハハハと笑い出しそうなものだったが、笑い声が続く事はなかった。
酔っていようが、彼等なりにAの事を心配しているのだろうか。
「けど、入院する程の過労ってなぁ…。
若いのにしっかりしてるなとは思ってたけど、心配だなぁ…」
「あぁ…」
彼等の言葉をほぼ聞き終えた後、降谷は駆け出した。
角を曲がったその先には、オレンジ色が灯っていた。
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虎鉄(DC一時お休み中)(プロフ) - 休校さん» 休校様、返信遅れて申し訳ありません!コメント有り難う御座います(^^)上から目線だなんてとんでもない!感想だけでも嬉しいのに、面白いと言って頂けて本当に感激です。この作品は特に、言葉を大事にしたのでより嬉しいです!また読んで貰えると跳んで喜びます笑。 (2020年6月20日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
休校 - とても素敵でした!今まで降谷さんのお話をはしごしてきたのですが、一番面白かったです。(上から目線不快に思われたら申し訳ない! 本当に、本当に、言葉といい、センスといい、ストーリーといい、弟子にしてください笑また、見にきさせていただきます。お疲れ様です (2020年6月15日 21時) (レス) id: e4ab2b5df5 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - 藍さん» 夜分遅く&返信遅くなり申し訳ありません。テーマは幸せ、だったのでそう感じて頂けて何よりです!文字数多くて読むの大変だったかと思いますが、それにも関わらず感想を下さり、本当にありがとうございます!これからも頑張れる様に頑張ります!笑。 (2019年5月13日 1時) (レス) id: f628ddcf07 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 読ませて頂きました!とっても綺麗なお話で、最後の幸せすぎる展開にお恥ずかしながら涙しちゃいました…笑これから続編も読ませていただくのですが、どうしても感想を伝えたくて仕方がありませんでした!これからも頑張って下さい!応援してます(*´ω`*) (2019年5月6日 23時) (レス) id: 8bfd8d1747 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ノンノンさん» 勿論覚えております^_^コメントありがとうございます!桜木美咲…!桜の木が美しく咲く、すごく日本らしくて素敵な名前に、自分でちょっとグッジョブと思ってしまいました笑。ノンノン様のコメントで私は幸せな気持ちです^_^本当に感謝です! (2018年8月2日 2時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年7月6日 0時