愛を込めて花束を2【降谷零】

11話 ページ24

※主人公語り

兄はある日、道を歩いていてちょっと怖そうな男の人に絡まれたらしいんです。
肩がぶつかったって因縁付けられて…でも兄は、柔道の腕に覚えがあったので困りはしなかったみたいなんですけど、道端だしどうしようか悩んでた所に…


『ちょいちょい、お兄さーん？』

『こんな道端で人の胸倉掴んで怒鳴り上げるなんて、よっぽどの理由があるんだよな？』

『非番と言えど、見過ごせねぇなぁ』


たまたま通りがかった人達が仲裁に入って、兄を助けてくれたらしいんです。
最初は3人、後から2人増えて全部で5人。
最初は、ちょっとチャラそうな人達に見えて、兄は絡んできた男の仲間だと思ったらしいんですけど、実はその人達、たまたま非番の警察官達だったそうです。
言葉巧みに、けど最終的には後から合流した男の人が、見るも鮮やかに激昂した男を撃退してくれたそうなんです。


『イデデデデデ……ッ、イテェよ離せよっ、クソ…っ‼』

『人に拳を振り上げる位だから、どんなものかと思ったらこんなもんか。』

『…ゼロ、やめとけ。』


警察官といっても、まだ警察学校だから一人前の警察官ではないんだって言ってたらしいんですけど


『まだ半人前だって⁉冗談じゃない！
もうその志だけでも立派な警察官だよ！』


兄は、ひどく感動したって言ってました。
何も御礼出来る物がなかった兄は、すぐ近くに、昔アルバイトをしてた中華料理屋がある事を思い出して、戸惑うその5人組を半ば強引に連れてって…厨房に立って料理を振る舞ったらしいんです。

兄の料理の腕は、ピカイチでしたから。

最初は戸惑ってた5人組も、一口食べるや否や「美味い」って言って次々に食べてくれるもんだから、兄も調子に乗って…
人の良い店主が止めない事を良いことに、中華料理屋で謎の和食のフルコース振る舞って…。

彼等が帰った後、自分も残りを食べようと思ってだし巻き玉子を口にした時、兄は愕然としたそうです。
兄は砂糖と塩を間違えてたんです。
だし巻き玉子は、兄の一番の得意料理だったのに。
幸い他の料理は大丈夫だった様なんですが、だし巻き玉子はとても食べられた代物じゃなくて…。

でも、彼等は顔色一つ変えないで
美味い美味いって完食してくれたんです。









※中華料理屋な所を、過去の数話で誤ってラーメン屋と記載してしまったので一部訂正しております。

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