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08話 ページ1

「零さんって、警察官だったりしませんか?」

「え?」

ピンポイントで当てられた自身の職業に、降谷は戸惑いを隠せなかった。
Aの意図が分からず、答えあぐねている降谷に気付いたかの様に、Aはハッと我に返った。

「あ、ごめんなさい、いきなり…。
何でもないです、忘れて下さい。」

Aは苦笑いを浮かべてそう言った。
無論、忘れるなど出来る訳がなかった。
心の奥底にある危機感が、降谷の唯一の拠り所の根本を揺るがす。
けれど、深追いは危険だと、ぼんやりとした頭ですぐに平静を取り戻す。

「…ただの公務員です。」

降谷が小さく告げると、Aは俯いた。
落胆ともとれるその行動に、降谷はますます訳が分からなくなる。

「お料理‼今出しますね。
……お待たせしました。
ちょっと熱いので気をつけて下さいね。」

顔を上げたAはいつもの女将の顔に戻っていた。
何か腑に落ちないものを感じるが、アルコールの回った頭ではこれ以上考えても埒があかないと悟る。
そして、目の前の料理に目を向ける。
それは、今までこの店で見た料理の中で最もシンプルなものだった。

黄金色に輝く白だしの中を揺蕩う絹の様な細麺に、申し訳程度に散らばった万能ネギの緑が映えている。

「にゅうめんか…、相変わらず何でもかんでも美味そうだな。」

酔いのせいか、降谷の感想は褒め言葉だがいつもよりは雑である。
けれども、しっかりと箸を両手で持ち礼儀を忘れなかった降谷を見て、Aは誰にも気付かれぬ様に小さく笑った。

「頂きます。」







「風邪良くなったみたいで安心しました。」

胃を労わる様に、よく噛みながらゆっくり食した降谷とは対照的に、先客であった2人組の男らは、降谷と同じタイミングで出されたシメをまるでラーメンの様に啜り、満足そうにそそくさと帰っていった。

やっと食べ終えた降谷の前に、透明なグラスに盛られたデザートが置かれる。
それは、これまた黄金色に輝く香り高い紅茶のゼリーだった。

店内は、降谷とAの2人きりだ。

08話→



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虎鉄(DC一時お休み中)(プロフ) - 休校さん» 休校様、返信遅れて申し訳ありません!コメント有り難う御座います(^^)上から目線だなんてとんでもない!感想だけでも嬉しいのに、面白いと言って頂けて本当に感激です。この作品は特に、言葉を大事にしたのでより嬉しいです!また読んで貰えると跳んで喜びます笑。 (2020年6月20日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
休校 - とても素敵でした!今まで降谷さんのお話をはしごしてきたのですが、一番面白かったです。(上から目線不快に思われたら申し訳ない! 本当に、本当に、言葉といい、センスといい、ストーリーといい、弟子にしてください笑また、見にきさせていただきます。お疲れ様です (2020年6月15日 21時) (レス) id: e4ab2b5df5 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - 藍さん» 夜分遅く&返信遅くなり申し訳ありません。テーマは幸せ、だったのでそう感じて頂けて何よりです!文字数多くて読むの大変だったかと思いますが、それにも関わらず感想を下さり、本当にありがとうございます!これからも頑張れる様に頑張ります!笑。 (2019年5月13日 1時) (レス) id: f628ddcf07 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 読ませて頂きました!とっても綺麗なお話で、最後の幸せすぎる展開にお恥ずかしながら涙しちゃいました…笑これから続編も読ませていただくのですが、どうしても感想を伝えたくて仕方がありませんでした!これからも頑張って下さい!応援してます(*´ω`*) (2019年5月6日 23時) (レス) id: 8bfd8d1747 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ノンノンさん» 勿論覚えております^_^コメントありがとうございます!桜木美咲…!桜の木が美しく咲く、すごく日本らしくて素敵な名前に、自分でちょっとグッジョブと思ってしまいました笑。ノンノン様のコメントで私は幸せな気持ちです^_^本当に感謝です! (2018年8月2日 2時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年7月6日 0時

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