08話 ページ50
「消化に良さそうなシメでも作りますね。」
そう言うとAは背を向けて作業し始めた。
その背中をぼんやり眺めていた降谷だったが、頭と肩にのしかかる倦怠感に負けてテーブルに両肘を立てた。
そして顔の前で組んだ手で目を覆う。
「Aちゃん、俺達にも作ってくれない？
あ、あとだし巻き玉子なんかも良いな！」
「あー…だし巻き玉子はやってないんです。
それでも良ければ、お作りしますよ。」
「んじゃ、それでよろしくー！」
視覚を閉ざした降谷の耳が様々な音を拾う。
水が沸騰する音、まな板の上をリズム良く包丁が踊る音、明朗なAの声。
これが自身の手の届く距離で聞けたら。
自身が帰る場所がこんな心休まる音で溢れていたら、どんなに幸せか。
きっとどんなに過酷な勤務だろうが、危険な任務だろうが、生きて帰る最大限の努力をするだろうと降谷は思った。
(
降谷本人だけではない、降谷の周囲も気付いてはいた。
この国に命を捧げる、降谷の危うさに。
「名前何だったけなぁ…えっと…あぁ‼
フルヤだよフルヤ‼」
突然聞こえてきた自身の本当の苗字に、悦に浸っていた降谷の心臓は、まるで誰かに掴まれたかの様に高鳴った。
「バカ、違ぇよ‼フルヤじゃなくて古田だよ‼」
「あーそうだ、古田だった。
にしてもあの時代は良かったよなぁ…」
(何だ、野球の話か…)
その後展開された男達の会話を聞くに、先程の言葉が自身へ向けられたものではなく記憶違いからきた偶然のものだったと分かり、降谷は胸を撫で下ろした。
「フルヤ…降谷…フルヤ…」
けれど、キッチンに立つAは小声でそう呟きながら、何かを思い出そうとする様に視線を彷徨わせた。
瞬きの回数が多くなる。
「あの」
一安心していた降谷へ、Aから声が掛かる。
「はい」
降谷が顔を上げると、何か神妙そうな顔つきのAが真っ直ぐ降谷を見つめていた。
「零さんって…」
「……。」
視線とは裏腹に歯切れの悪いAの様子に、降谷は違和感を覚えるも、静かにAの次の言葉を待った。
「零さんって、警察官だったりしませんか？」
「…え？」
2人の視線が、交錯する。
※続編繋げております。
1人でも多く、パート2そして最後までお付き合い頂ければ嬉しいですm(_ _)m
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1217人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
虎鉄(プロフ) - 朔夜さん» この話において優しいは最高の褒め言葉です、ありがとうございます涙。まさにその通り、ちょろっとしか知りませんがその方をイメージしております！ほっこりをお届け出来ているなら心底ホッとしました。 (2018年6月30日 20時) (
レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - あー、なんて優しい話だー。うっかり某特命係の行きつけを思い出し、かってにリンクさせてホッコリ.....。幸せという花束、ありがとう(^-^) (2018年6月30日 19時) (レス) id: 52c615fe9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 即減速したので大丈夫でした笑。この道路でこの制限速度はちょっと…と思いながらも、車社会なので一発免停に怯える毎日です。ご心配お掛けしてすみません！本当にいつもありがとうございます涙。 (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 頑張ってきた発言にホロリときそうでした…数字に囚われて精神的に更新に追われてた部分があったので、2日休むだけで大分プレッシャーから解き放たれました笑。未だスランプ中ですが汗。警察学校組を下手に書きたくないってのもあるかもしれません… (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
ぴよこ(プロフ) - そして覆面Σ( ﾟДﾟ)！！免停は免れたのでしょうか((( ；ﾟДﾟ)))？気を付けてください(>_<) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3760492a40 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：虎鉄
| 作成日時：2018年6月15日 0時
