愛を込めて花束を【降谷零】

08話「にゅうめんと紅茶ゼリー」 ページ48

俺は、何をしたんだ。

「……好きなんだ。」

俺は今、なんて言った？






ー１時間前ー

降谷は重たい頭と身体を引きずる様に歩いていた。
あの時の風邪は完治している。
原因はハッキリ分かっていた。



ー数時間前ー

『あぁ降谷‼ちょうど良い所に。』

『…何かありましたか？』

『この後、警視庁の参事官と飲みに行く事になってるんだ。
本当は来週の予定だったんだが、予定が合わなくなってしまってね。』

『……はぁ。』


気の抜けた返事をする降谷だが、この時点で既に、この後続く上司の言葉がわかっていた。

『とても寛大な人で、秘密が多く他から煙たがられる事の多い我々公安にも理解があり、かつ協力的な人でね。
今までもそうだが、これからも会う機会は多いだろう。
前々からお前の事を紹介しておきたかったんだ。』

上司の酒の席に同席するのも、立派な仕事だ。
潜入捜査終了後も更に高みを目指す降谷にとって、多方面に顔を売れる機会を作ってくれる目の前の上司には感謝している。

けれど、今日ばかりは気が重い。

それもそうだ。
久々の大きな案件を片付けたばかりの降谷は、今日で3徹目を迎える。

(後は寝るだけだったのに…。
しかも、さっき頭痛薬飲んだばっかりなんだけどな…。)

心の内ではげんなりしているものの、顔は努めて冷静だ。

断れる筈も、断る理由もなく、そのまま降谷は上司と共に所謂”料亭”と言われる高級和食料理屋に向かった。
せめて、飲む事は避けたいと思い、降谷は、一旦帰宅し、自分の運転する車で向かう事を提案したものの

『いや、タクシーで向かおう。
なに、心配要らない。
経費で落としたり、税金をこんな所で使ったりしないさ。』

上司は頑なだった。

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