07話 ページ43
「まさか、そのハムサンドを作ってらしたのが安室さんだったなんて…恥ずかしい…」
彼女に初めて会った時、初めてのドライブが降谷零としてではなく、まさかの安室透としてAを助手席に招く事になるなんて誰が予想出来ただろうか。
(いつもより、慎重に、丁寧に…)
普段から無理させる事の多いRX-7を労わるようにゆっくり走らせる。
普段の降谷のドライブテクニックを知る者からすれば、驚くほど静かな運転だ。
10分ほど走った所に、駐車場も完備された大きな公園がある。
昼のピークを過ぎた時間ではあるが、木漏れ日と緑溢れるその公園を利用する人は多く、その日も多くの散歩客が居た。
「どうぞ、気を付けて。」
まるでダンスのエスコートの様に、降谷は助手席のドアを開け、Aに手を差し出した。
「すみません…あ、ありがとうございます。」
降谷のあまりの紳士ぶりに目をパチパチさせるAだったが、差し出されたその手をおずおずと掴んだ。
酔っ払いとはいえ一回りも二回りも年上でさえ、ピシッと一蹴するAの姿はそこにない。
まるで、いつもとは逆の光景である。
『元々は看護師さんになるつもりが、小料理屋のオーナーに?
それもまた凄いですね…でも、白衣にしても着物にしてもどちらも貴方によく似合いそうだ。』
『今度僕もお伺いして、オムライスでも作って貰おうかな。』
道中、降谷の知らなかった彼女の一面を知る事も出来た。
降谷は、花屋の店員でもなく小料理屋の女将でもない、1人の女性である桜木Aの時間を独り占め出来る事が只々嬉しかった。
半ば強引でもあったが、偶然目の前にぶら下げられたチャンスを掴まない手はなかった。
「すみません、お忙しいのにいきなりこんな場所まで連れてきてしまって。
流石にもうポアロでお作りする事は出来ないので…。」
「いえ!今日は元々いつもより早上がりで時間もありましたし、むしろこちらがすみません。
でも、念願だったハムサンドが食べられるのはとても嬉しいです。」
恥ずかしそうにはにかむ彼女から目が離せない。
「ハハ、Aさんが一生サンドイッチを食べられなくならずに済んで良かったです。」
燦々と輝く太陽
雲一つない澄んだ青空
青々としげる芝生の上に敷いたカラフルなレジャーシート
まさにピクニック日和だ。
降谷としてではなく安室として
特別な関係としてではないのが残念だが、今は、これで良い。
1216人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
虎鉄(プロフ) - 朔夜さん» この話において優しいは最高の褒め言葉です、ありがとうございます涙。まさにその通り、ちょろっとしか知りませんがその方をイメージしております!ほっこりをお届け出来ているなら心底ホッとしました。 (2018年6月30日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - あー、なんて優しい話だー。うっかり某特命係の行きつけを思い出し、かってにリンクさせてホッコリ.....。幸せという花束、ありがとう(^-^) (2018年6月30日 19時) (レス) id: 52c615fe9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 即減速したので大丈夫でした笑。この道路でこの制限速度はちょっと…と思いながらも、車社会なので一発免停に怯える毎日です。ご心配お掛けしてすみません!本当にいつもありがとうございます涙。 (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 頑張ってきた発言にホロリときそうでした…数字に囚われて精神的に更新に追われてた部分があったので、2日休むだけで大分プレッシャーから解き放たれました笑。未だスランプ中ですが汗。警察学校組を下手に書きたくないってのもあるかもしれません… (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
ぴよこ(プロフ) - そして覆面Σ( ゚Д゚)!!免停は免れたのでしょうか((( ;゚Д゚)))?気を付けてください(>_<) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3760492a40 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年6月15日 0時