愛を込めて花束を【降谷零】

06話”勇敢” ページ41

『何か言いたい事があるなら言っても良いと思いますよ。』

『…え？』

『相手が故人だからといって言葉を飲み込む必要はないと思いますよ。
言いたい事があるなら、それをぶつけても良いと思います。
その方とお花以外、他に誰も聞いてませんから。』




『安室さんは、その方に会えるとしたら、まず何を伝えたいですか？』


降谷は、唇を噛み締めた後、一度大きく深呼吸をした。

自分の命を犠牲にすれば、沢山の人間が助かる。
自分が同じ状況に立ったとしたら、自分はどうしただろう。
やはり、彼と同じ道を辿ったのだろうか。
最後の最後まで足掻いただろうか。

「お前だったら…
お前程の男だったら…
もっと他に方法を探せたんじゃないのか…っ」

『冷静に状況を判断して最善の方法を取る。
そんな頭の良い奴だった。
だから…それが最善の策だと判断して…いとも簡単に消えていった。』

「馬鹿野郎……っ」

わかっている。
彼は、警察官として当たり前の判断を下しただけだと。



「松田と景光は、次会ったらまず説教だからな。」

そう言いながら、降谷はポケットの中に忘れられたままのものを取り出した。

「暫くはそっちに行くつもりはない。
まだまだやらなきゃいけない事があるからな。
それまでに、俺の怒りが収まっていればいいな？
だからそれまで…これ食って気長に待ってろ。」

そして降谷は、墓前におにぎりを2つ供えた。
なんの変哲もない焼きおにぎりと
出汁を利かせて炊いた炊き込みご飯のおにぎり。

「じゃあな。
…いつか、良い報告が出来る様に頑張ってくるよ。
これからデートなんでね。」




【ハイビスカス(赤):勇敢】





(後書き)
最後のおにぎりは、朝ご飯の残りで握ったという設定。
皆さんはお供え物、きちんと持って帰って下さいね。
実際お墓で1人で喋ってたらヤバイ人だけど、フィクションなので許してください(今更)

スランプは、やる気云々もあるけど、何より警察学校組が尊すぎて、変に書きたくなくて書き渋ってたのかも。

1話で終わる訳がなかった。
しかも、完全なる思いつきで6話まだ続く展開にしてしまった。
そろそろ折り返し。

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