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01話 ページ5

降谷は、じっと彼女を見つめた。
さすが接客業、しかも女将とだけあって彼女は降谷の視線に物怖じもせずに笑って答えた。


「わかりません。」

「…え?」

「だって、お兄さんと会ったのは数十分前ですよ?
刑事や探偵じゃないんですから、わかる筈がありません。」


”刑事””探偵”
身に覚えのありすぎるその言葉に降谷は内心どきっとしたと同時に、とある単語に気恥ずかしさが込み上げる。
しかし降谷はポーカーフェイスを貫いた。


「恥ずかしいんですが…もうお兄さんなんて呼ばれる年齢ではないんです。
差し支えなければ」

「あ、申し遅れました。
ここの店主の桜木Aと申します。
中には女将、と呼んで下さるお客様もいらっしゃいますが…女将と呼ばれるには全てがまだまだの若輩者です。
お好きな様に呼んで下されば幸いです。」


降谷の意図を汲むように、彼女もといAは鮮やかに自ら先に名を名乗った。


「降谷です。
貴方の推測通り、この近くに職場と自宅があります。
…本当に美味しかった。」

「お口に合ったなら良かった。」


そう言うと、Aは再び小鉢を差し出した。


「デザートです。
普段はお酒を呑まれる方が多いのであまりお出しする機会がないんですけど、もし良かったら。」


トロリと輝くそれは、かつてテニスに夢中だったあの頃、よく口にした懐かしいもの。


「…はちみつレモン、懐かしいな。」


学生時代の懐かしい記憶に、ぼんやりと幼馴染の姿が浮かぶ。
もうこの世には居ない、かけがえのない同志。





降谷はすぐに帰宅する筈が、思ったより時間を食ってしまった事に気付いた。
あまりにも居心地の良い空間に、時が経つのを忘れていた。

01話 完食→←01話



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虎鉄(プロフ) - 朔夜さん» この話において優しいは最高の褒め言葉です、ありがとうございます涙。まさにその通り、ちょろっとしか知りませんがその方をイメージしております!ほっこりをお届け出来ているなら心底ホッとしました。 (2018年6月30日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - あー、なんて優しい話だー。うっかり某特命係の行きつけを思い出し、かってにリンクさせてホッコリ.....。幸せという花束、ありがとう(^-^) (2018年6月30日 19時) (レス) id: 52c615fe9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 即減速したので大丈夫でした笑。この道路でこの制限速度はちょっと…と思いながらも、車社会なので一発免停に怯える毎日です。ご心配お掛けしてすみません!本当にいつもありがとうございます涙。 (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 頑張ってきた発言にホロリときそうでした…数字に囚われて精神的に更新に追われてた部分があったので、2日休むだけで大分プレッシャーから解き放たれました笑。未だスランプ中ですが汗。警察学校組を下手に書きたくないってのもあるかもしれません… (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
ぴよこ(プロフ) - そして覆面Σ( ゚Д゚)!!免停は免れたのでしょうか((( ;゚Д゚)))?気を付けてください(>_<) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3760492a40 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年6月15日 0時

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