検索窓
今日:20 hit、昨日:108 hit、合計:603,798 hit

06話 ページ40

「ハイビスカスは殆ど病気しない強いお花です。
よく”レイ”なんかに使われてるのは、摘んでも中々萎れないからなんです。」

「……”レイ”」

「? はい、レイ。
あの、空港とかで」

「あ、あれですね、すみません…。」









墓の前で、慣れないタバコに噎せる男が1人。

「………ふぅー…ゴホッゴホッ」

墓前に立つと、降谷はポケットからコンビニで買ったばかりのライターと煙草を取り出した。
真新しいその箱の封を開け、取り出した1本を口に咥える。
息を吸い込みながら先端にライターの火を近付ける。
普段好んで吸わないのもあるが、口内に広がる煙のミリ数の重たさに思わず降谷は噎せた。

「お前の性格的に多分銘柄は変わってないだろ。
寮で隠れて吸ってたの知ってるんだからな。」

火の付いたタバコと、どうせだからと残りのタバコも箱ごと墓前に供える。
そして一番最後に、花を添える。

「お墓にハイビスカスなんて見た事ない光景だな。
これで、トレードマークだったサングラスでもあったら…多分知らない人から見れば、お前サーファーだったって思われるんだろうな。」

降谷は笑った。
先ほどまで吹いていなかった風が、煙草の煙を遊ばせる。

「今日、あの頃の夢を見たよ。」



『降谷!』

『ゼロ!』



「お前ら…夢の中でも相変わらず騒がしいんだよ。」

余りに密度の濃い思い出に、ずっと昔から一緒に居るような感覚に陥るが、あの頃と言っても、彼等と共に過ごしたのはたったの6ヶ月だけだ。

「案外グルメだったのは松田…お前だったよな。
カップラーメンさえあれば生きていけそうな顔してた癖に、よく休みの時に皆でラーメン行っては、お前が正直にマズイって言っては店長に睨まれて。
覚えてるか?
中華料理屋で食べた謎の和食のフルコース…なんでそうなったか朧げにしか俺は覚えてないけど、お前あれ信じられない位絶賛してたよな。」


まるで降谷の問いに応えるかの様に、風が吹き抜ける。
火をつけた煙草が、全て灰になって空へ消えた。

06話”勇敢”→←06話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (391 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1217人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

虎鉄(プロフ) - 朔夜さん» この話において優しいは最高の褒め言葉です、ありがとうございます涙。まさにその通り、ちょろっとしか知りませんがその方をイメージしております!ほっこりをお届け出来ているなら心底ホッとしました。 (2018年6月30日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - あー、なんて優しい話だー。うっかり某特命係の行きつけを思い出し、かってにリンクさせてホッコリ.....。幸せという花束、ありがとう(^-^) (2018年6月30日 19時) (レス) id: 52c615fe9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 即減速したので大丈夫でした笑。この道路でこの制限速度はちょっと…と思いながらも、車社会なので一発免停に怯える毎日です。ご心配お掛けしてすみません!本当にいつもありがとうございます涙。 (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 頑張ってきた発言にホロリときそうでした…数字に囚われて精神的に更新に追われてた部分があったので、2日休むだけで大分プレッシャーから解き放たれました笑。未だスランプ中ですが汗。警察学校組を下手に書きたくないってのもあるかもしれません… (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
ぴよこ(プロフ) - そして覆面Σ( ゚Д゚)!!免停は免れたのでしょうか((( ;゚Д゚)))?気を付けてください(>_<) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3760492a40 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年6月15日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。