06話 ページ40
「ハイビスカスは殆ど病気しない強いお花です。
よく”レイ”なんかに使われてるのは、摘んでも中々萎れないからなんです。」
「……”レイ”」
「? はい、レイ。
あの、空港とかで」
「あ、あれですね、すみません…。」
墓の前で、慣れないタバコに噎せる男が1人。
「………ふぅー…ゴホッゴホッ」
墓前に立つと、降谷はポケットからコンビニで買ったばかりのライターと煙草を取り出した。
真新しいその箱の封を開け、取り出した1本を口に咥える。
息を吸い込みながら先端にライターの火を近付ける。
普段好んで吸わないのもあるが、口内に広がる煙のミリ数の重たさに思わず降谷は噎せた。
「お前の性格的に多分銘柄は変わってないだろ。
寮で隠れて吸ってたの知ってるんだからな。」
火の付いたタバコと、どうせだからと残りのタバコも箱ごと墓前に供える。
そして一番最後に、花を添える。
「お墓にハイビスカスなんて見た事ない光景だな。
これで、トレードマークだったサングラスでもあったら…多分知らない人から見れば、お前サーファーだったって思われるんだろうな。」
降谷は笑った。
先ほどまで吹いていなかった風が、煙草の煙を遊ばせる。
「今日、あの頃の夢を見たよ。」
『降谷!』
『ゼロ!』
「お前ら…夢の中でも相変わらず騒がしいんだよ。」
余りに密度の濃い思い出に、ずっと昔から一緒に居るような感覚に陥るが、あの頃と言っても、彼等と共に過ごしたのはたったの6ヶ月だけだ。
「案外グルメだったのは松田…お前だったよな。
カップラーメンさえあれば生きていけそうな顔してた癖に、よく休みの時に皆でラーメン行っては、お前が正直にマズイって言っては店長に睨まれて。
覚えてるか?
中華料理屋で食べた謎の和食のフルコース…なんでそうなったか朧げにしか俺は覚えてないけど、お前あれ信じられない位絶賛してたよな。」
まるで降谷の問いに応えるかの様に、風が吹き抜ける。
火をつけた煙草が、全て灰になって空へ消えた。
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虎鉄(プロフ) - 朔夜さん» この話において優しいは最高の褒め言葉です、ありがとうございます涙。まさにその通り、ちょろっとしか知りませんがその方をイメージしております!ほっこりをお届け出来ているなら心底ホッとしました。 (2018年6月30日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - あー、なんて優しい話だー。うっかり某特命係の行きつけを思い出し、かってにリンクさせてホッコリ.....。幸せという花束、ありがとう(^-^) (2018年6月30日 19時) (レス) id: 52c615fe9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 即減速したので大丈夫でした笑。この道路でこの制限速度はちょっと…と思いながらも、車社会なので一発免停に怯える毎日です。ご心配お掛けしてすみません!本当にいつもありがとうございます涙。 (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 頑張ってきた発言にホロリときそうでした…数字に囚われて精神的に更新に追われてた部分があったので、2日休むだけで大分プレッシャーから解き放たれました笑。未だスランプ中ですが汗。警察学校組を下手に書きたくないってのもあるかもしれません… (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
ぴよこ(プロフ) - そして覆面Σ( ゚Д゚)!!免停は免れたのでしょうか((( ;゚Д゚)))?気を付けてください(>_<) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3760492a40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年6月15日 0時