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06話 ページ39

降谷はその花から、なぜか視線を外す事が出来なかった。

「一見すると、物事に対して冷めてるというか、格好良く言えばクールというか…そんな奴だったんです。
初めて会った時は、基本ダルそうで、自分とは合わないだろうなって思ってたんですけど、すぐにその印象は変わって…」

気がつくと、降谷は口を開いていた。


「実際はどんな方だったんですか?」

「冷めてるんじゃなくて何事にも冷静で…けど誰よりも熱いものを内に秘めてる男だった。
まさに、その花みたいに真っ赤な情熱を。
手先は器用な癖に、料理はからっきしで…まぁ多分やれば出来たんでしょうけど。
突拍子もなく、突然あれが食べたいって言ってはよく料理を作らされました。」


降谷の意識が、現在と過去を行き来する。
頭の片隅で、あの日の4人の笑い声が聞こえる気がする。

かたやAは、時折相槌を打ちながら静かに降谷の話に耳を傾けていた。
降谷の表情は、その言葉とは裏腹にどこか楽しそうで、どこか眩しいものを見ているかのような瞳をしていた。


「冷静に状況を判断して最善の方法を取る。
そんな頭の良い奴だった。
だから…それが最善の策だと判断して…いとも簡単に消えていった。」

「……。」


人伝に聞いた奴の最期。
彼は爆発物の脅威を常に肌で感じていた筈だ。
あの飄々とした男が恐怖する顔など想像も付かないが、それでも、怖くなかった筈がない。
奴の死を受け入れた今では、その死に方さえ格好良すぎて、男として嫉妬しそうな程だ。
それと同時に消化しきれない思いが込み上げる。

「……。
はい、どうぞ。」

ハッとして顔を上げた降谷の視界が、色鮮やかな赤に染まる。
先ほどまで、自身の目を虜にして離さなかった、太陽に向かって咲き誇るハイビスカス。

「花に対して綺麗だとか可愛いだとか思った事はあったけど…この感情は初めてです。
とても…力強い。」



今朝、あんな夢を見たせいだろうか。
目が熱くなる。

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虎鉄(プロフ) - 朔夜さん» この話において優しいは最高の褒め言葉です、ありがとうございます涙。まさにその通り、ちょろっとしか知りませんがその方をイメージしております!ほっこりをお届け出来ているなら心底ホッとしました。 (2018年6月30日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - あー、なんて優しい話だー。うっかり某特命係の行きつけを思い出し、かってにリンクさせてホッコリ.....。幸せという花束、ありがとう(^-^) (2018年6月30日 19時) (レス) id: 52c615fe9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 即減速したので大丈夫でした笑。この道路でこの制限速度はちょっと…と思いながらも、車社会なので一発免停に怯える毎日です。ご心配お掛けしてすみません!本当にいつもありがとうございます涙。 (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 頑張ってきた発言にホロリときそうでした…数字に囚われて精神的に更新に追われてた部分があったので、2日休むだけで大分プレッシャーから解き放たれました笑。未だスランプ中ですが汗。警察学校組を下手に書きたくないってのもあるかもしれません… (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
ぴよこ(プロフ) - そして覆面Σ( ゚Д゚)!!免停は免れたのでしょうか((( ;゚Д゚)))?気を付けてください(>_<) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3760492a40 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年6月15日 0時

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