06話 ページ38
あの日はそのまますぐに風見と別れて帰宅し、シャワーを浴びた後、Aに言った通りすぐに横になり体を休めた。
その甲斐あってか、胃を幸せで満たしたせいか、翌日には体調も万全な状態に戻っていた。
あの後も数日、日本の平和の為に勤労に励み、そして今日は、有休消化でも何でもなく前もって決められていた休暇である。
スッキリとした目覚めの良い朝だ。
降谷は久々に、キッチンに立ち朝食を作った。
ニュースを見ながら1人食べ終え、食後のコーヒーを嗜んでいた降谷の視界に、ふと壁に掛けられたカレンダーが映り込む。
「……7日か。」
世の中ではラッキーセブンと言われるこの数字も、降谷にとっては忌まわしき数字だ。
(今日は編み込みのハーフアップか…)
「あ、こんにちは。
なんだかお久しぶりな気がしますね、安室さん。」
危うく名前を呼んでしまいそうになる自分に焦る。
気が緩んでいたのか、降谷はAにそう話しかけられた事で、自身の置かれた状況を瞬時に思い出し、すぐさま安室透に切り替えた。
「そういえば、そうですね…ちょっと仕事が立て込んで。
それより今日はいつもと雰囲気が少し違いますね。
いつにも増してとても可愛らしい…、ヘアスタイルだ。」
(…控え目に言っても、可愛い。)
降谷(+安室)としては小料理屋での逢瀬も含めると結構な頻度で会っているのだが、それはあくまでも降谷から見た頻度である。
「……いつも?」
Aの中で降谷と安室は別の人間だ。
「あ、いや、何でもないです。」
「はぁ…、こちらこそいつもありがとうございます。
今日は何かご希望ございますか?」
腑に落ちない様子のAだったが、それ以上の詮索は無用と判断したのか、すぐに花屋の顔に切り替わった。
自分の言葉に対してもう少し顔を赤らめるなど反応が欲しかったな、と降谷の心の中では残念な気持ちが見え隠れする。
不思議な事に、安室透も降谷零に変わりないのだが、なんだか安室透の方が余裕を持ってAと話せる気がした。
降谷はAの背後に広がる色とりどりの花々を目に映した。
その中で1つ。
太陽に向かって力強く咲き誇るその花に、降谷の目は釘付けになった。
墓前に供えるには、少し躊躇うような気がする鮮やかな赤。
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虎鉄(プロフ) - 朔夜さん» この話において優しいは最高の褒め言葉です、ありがとうございます涙。まさにその通り、ちょろっとしか知りませんがその方をイメージしております!ほっこりをお届け出来ているなら心底ホッとしました。 (2018年6月30日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - あー、なんて優しい話だー。うっかり某特命係の行きつけを思い出し、かってにリンクさせてホッコリ.....。幸せという花束、ありがとう(^-^) (2018年6月30日 19時) (レス) id: 52c615fe9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 即減速したので大丈夫でした笑。この道路でこの制限速度はちょっと…と思いながらも、車社会なので一発免停に怯える毎日です。ご心配お掛けしてすみません!本当にいつもありがとうございます涙。 (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 頑張ってきた発言にホロリときそうでした…数字に囚われて精神的に更新に追われてた部分があったので、2日休むだけで大分プレッシャーから解き放たれました笑。未だスランプ中ですが汗。警察学校組を下手に書きたくないってのもあるかもしれません… (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
ぴよこ(プロフ) - そして覆面Σ( ゚Д゚)!!免停は免れたのでしょうか((( ;゚Д゚)))?気を付けてください(>_<) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3760492a40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年6月15日 0時