05話 ページ30
「…そう言うと思って、小さいの一つだけよけてあります。
一つだけですからね？」
「…ありがとう。」
眼の前で繰り広げられる光景に、風見は開いた口が塞がらなかった。
当たり前だが、降谷とて人間である。
風見もそれは勿論分かっている。
けれど心のどこかで、降谷は人間離れしているというか、信念の為に突き進む降谷の事だから愛だとか甘えだとかは無縁、素を見せられる人間など居ないと勝手に思っていた節があった。
それがどうだ。
今、目の前に居る降谷は、明らかにリラックスしていて少なくとも今まで風見の見たことのない降谷だ。
これが、素の降谷零という男な気がして、驚き以上に、その人間らしさにぐっと親近感が湧いた。
「お待たせしました。
さぁ、冷めない内にお召し上がりください。」
そして、降谷の前に新たに置かれた小鉢の中には、言った通りの小さな鳥の唐揚げ一つと、鳥ではない唐揚げが数個乗せられていた。
「代わりに、フグの唐揚げです。
それなら低カロリーで脂肪分は少ないですし、栄養価も悪くはないですから。」
始めから降谷がゴネる事がわかっていたかの様な対応だった。
そんなAの気遣いに降谷は嬉しそうに礼を言うと、箸を持った。
風見も慌てて箸を持つ。
「いただきます。」
「頂きます。」
定食屋と何ら変わりない、と思った事を撤回しよう。
うまく表現は出来ないが、この上司が行きつけと謳うだけの事はある。
鳥の唐揚げは、ポピュラーな料理だ。
作ろうと思えば、油にこそ気を付けなければいけないが正直小学生にだって作れる。
だからこそ、難しい。
味は作る人の数だけ、千差万別。
「……っ‼」
それでも、今口に入れた唐揚げは言葉では言い表せない程に自分の舌に馴染んだ。
「美味いだろ？
下手な食レポは期待してないからな。」
熱さと感動に言葉の出ない風見を見て、降谷はさも自分が作ったかの様に笑った。
そんな風見を見届けてから、降谷も思いやりのつまった料理にレンゲを伸ばす。
フーフーと冷ます姿は、本当に時として鬼の様になるあの上司だろうか。
雑炊を一口含んで、降谷は恍惚のため息を漏らした。
「あー…生きてきて良かった……」
他人からすれば、雑炊一つ褒める言葉にしてはあまりに壮大で大袈裟だと笑うだろう。
けれど風見は、降谷が言うその言葉の重みを知っている。
敬愛する上司のその言葉を横で聞けた風見こそ、生きてきて良かったと喜びに心震えた。
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虎鉄(プロフ) - 朔夜さん» この話において優しいは最高の褒め言葉です、ありがとうございます涙。まさにその通り、ちょろっとしか知りませんがその方をイメージしております！ほっこりをお届け出来ているなら心底ホッとしました。 (2018年6月30日 20時) (
レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - あー、なんて優しい話だー。うっかり某特命係の行きつけを思い出し、かってにリンクさせてホッコリ.....。幸せという花束、ありがとう(^-^) (2018年6月30日 19時) (レス) id: 52c615fe9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 即減速したので大丈夫でした笑。この道路でこの制限速度はちょっと…と思いながらも、車社会なので一発免停に怯える毎日です。ご心配お掛けしてすみません！本当にいつもありがとうございます涙。 (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 頑張ってきた発言にホロリときそうでした…数字に囚われて精神的に更新に追われてた部分があったので、2日休むだけで大分プレッシャーから解き放たれました笑。未だスランプ中ですが汗。警察学校組を下手に書きたくないってのもあるかもしれません… (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
ぴよこ(プロフ) - そして覆面Σ( ﾟДﾟ)！！免停は免れたのでしょうか((( ；ﾟДﾟ)))？気を付けてください(>_<) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3760492a40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：虎鉄
| 作成日時：2018年6月15日 0時
