05話 ページ26
風見にとって、目の前の女性が発した言葉はあまりにも衝撃的だった。
「れっ…え、店主…っ⁉」
(て、店主…っ⁉
さっき降谷さん、死ぬ程怖いって…
え、れ、零さんて降谷さんの事を名前で…⁉
いやそもそもこの人が本名を、しかもフルネーム教えたのか⁉
いや、待てよ…まさか調査対象？
それとも…新たな協力者なのか？)
驚きに口を開いたまま固まる風見に対して、名前は思わず笑いを溢した。
「風見」
職場ほどではないが、ほんの少しだけ温度の下がった降谷の声色に風見はハッと、いつもの冷静さを取り戻す。
そんな風見の様子を見抜いたかの様に、名前がすかさずフォローの言葉を掛ける。
「未だに、初対面の方には”店主は今日居ないの？”って言われる事ありますし、自分がお客の立場でも多分同じ反応をすると思うので気になさらないで下さい。」
「あ、いえ…失礼しました。
風見と言います。
店名から、勝手に屈強な男が店主かと錯覚してたもので…まさか、こんな…」
「…？」
「風見」
「可憐な女性が店主とは思いも寄らなかっただけで…、見えないとかそういう訳ではないんです。」
気を遣ってではなく、本当にそう思っているかの様な彼女の物言いに、風見も素直に思ったままを口にした。
自身の言葉と被った、降谷の、自分を呼ぶ声色がまた少し温度が下がった事にはこの際気付かなかった事にする。
「…流石零さんの部下、お上手ですね。
あ、今おしぼり出しますね。
……ん？」
「…？何か顔についてるか？」
「…いえ。」
そして、2人の前に冷たいおしぼりが置かれる。
季節は夏ではない。
まだ昼夜の温度差の大きい日もある中で、風見は久々に冷たいおしぼりを手にした気がして、またそんな季節が来るのかと時の経過の早さを実感する。
「風見」
「はいっ」
「さっき失礼な事考えただろう。」
図星を突かれたその言葉に風見は固まる。
最初にからかったのは降谷だろう、と思わない辺りが、風見が周りから”降谷の腹心の部下”と言われる所以だろう。
「仕事は何一つ関係ない。
ここは、ただ俺のお気に入りで、行きつけなだけだ。
何が出てきても美味い。」
降谷はそう言うと、丸まったままの棒状の冷たいおしぼりを疲れ切った目元にあてて、深い息を一つ吐いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1217人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
虎鉄(プロフ) - 朔夜さん» この話において優しいは最高の褒め言葉です、ありがとうございます涙。まさにその通り、ちょろっとしか知りませんがその方をイメージしております！ほっこりをお届け出来ているなら心底ホッとしました。 (2018年6月30日 20時) (
レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - あー、なんて優しい話だー。うっかり某特命係の行きつけを思い出し、かってにリンクさせてホッコリ.....。幸せという花束、ありがとう(^-^) (2018年6月30日 19時) (レス) id: 52c615fe9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 即減速したので大丈夫でした笑。この道路でこの制限速度はちょっと…と思いながらも、車社会なので一発免停に怯える毎日です。ご心配お掛けしてすみません！本当にいつもありがとうございます涙。 (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 頑張ってきた発言にホロリときそうでした…数字に囚われて精神的に更新に追われてた部分があったので、2日休むだけで大分プレッシャーから解き放たれました笑。未だスランプ中ですが汗。警察学校組を下手に書きたくないってのもあるかもしれません… (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
ぴよこ(プロフ) - そして覆面Σ( ﾟДﾟ)！！免停は免れたのでしょうか((( ；ﾟДﾟ)))？気を付けてください(>_<) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3760492a40 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：虎鉄
| 作成日時：2018年6月15日 0時
