03話 ページ16
「ここに来るたび心底思う。
日本人で良かった。」
これ以上ない褒め言葉だった。
「…ふふ…っ、大袈裟ですよ…っ。」
人は嬉しさが頂点に達すると、恥ずかしさも通り越して笑いが込み上げるものなのかとAはぼんやり思った。
「大袈裟なんかじゃない。
ここの料理は…何だか食べた事がある様な懐かしい味がする。
あ、どこにでもあるとかそういう意味じゃなくて‼
日本人が元々知ってる本来の味っていうか…もちろん良い意味で。
和食って凄いって実感する…いや、Aさんの腕が凄いのか。」
「……」
「ん?」
「名前…」
「え?…あっ…」
降谷は、分かりやすく狼狽えた。
Aの名前を呼んでみたい、と思っていた。
むしろ心の中ではずっとAさんと呼んでいたのが、あまりの美味しさと幸せな空間に気が緩んでしまった。
「すみません‼勝手にAさん、なんて呼んじゃって…本当にすみません‼」
「いえ‼謝らないで下さい‼
お客様の殆どは下の名前で呼んで下さる方がほとんどなので‼はい‼
むしろ苗字で呼ばれる事の方が少なくて、印象に残ってただけで‼
だから、少しビックリしただけです‼
はい‼」
降谷につられたのか、焦る降谷より遥かにAの方が焦った様に捲し立てた。
年齢は分からないが、立場上大人びて見えるAの本来の姿を見た様な気がして、降谷は目が点になると同時に嬉しさが込み上げる。
そして先程のAと同じ様に、嬉しさが頂点に達すると、自身のやらかした恥ずかしさも忘れて笑いが込み上げた。
突然声をあげて笑い出した降谷に、Aは困惑する。
「あー…、久々にこんなに笑った…っ。」
思わず浮かんだ涙を拭う降谷にAはお茶を差し出す。
「…なんか分からないけど、馬鹿にされた様な気がします…。」
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虎鉄(プロフ) - 朔夜さん» この話において優しいは最高の褒め言葉です、ありがとうございます涙。まさにその通り、ちょろっとしか知りませんがその方をイメージしております!ほっこりをお届け出来ているなら心底ホッとしました。 (2018年6月30日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - あー、なんて優しい話だー。うっかり某特命係の行きつけを思い出し、かってにリンクさせてホッコリ.....。幸せという花束、ありがとう(^-^) (2018年6月30日 19時) (レス) id: 52c615fe9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 即減速したので大丈夫でした笑。この道路でこの制限速度はちょっと…と思いながらも、車社会なので一発免停に怯える毎日です。ご心配お掛けしてすみません!本当にいつもありがとうございます涙。 (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 頑張ってきた発言にホロリときそうでした…数字に囚われて精神的に更新に追われてた部分があったので、2日休むだけで大分プレッシャーから解き放たれました笑。未だスランプ中ですが汗。警察学校組を下手に書きたくないってのもあるかもしれません… (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
ぴよこ(プロフ) - そして覆面Σ( ゚Д゚)!!免停は免れたのでしょうか((( ;゚Д゚)))?気を付けてください(>_<) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3760492a40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年6月15日 0時