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03話 ページ14

この角を曲がれば暖簾が見えるといった所で、降谷は一度足を止め、少しだけあがった息を整える。
逸る気持ちもあるが、余裕のない姿を見られたくないという気持ちの方が勝った。

ブーケを後ろ手に隠し、ふぅと一つ息を吐くと、降谷は角を曲がる。
そこには暖かなオレンジの灯りと暖簾。
そして、今まさにその暖簾を下げようとしているAの後ろ姿があった。

(遅かったか……)

どうしようかと、苦慮する降谷は立ち尽くした。
はたから見れば、ブーケを背中に隠し持ち、立ち尽くす己の姿は随分滑稽だっただろう。


「いらっしゃいませ」

「…‼」


気配を殺し、どうしようか苦慮していた降谷は、声を掛けられるまでAが自身に気がついた事に気付かなかった。
肩を震わせ顔を上げると、あの日と同じ様にAは笑みを浮かべていた。
固まる降谷へダメ押しの一発。

「どうぞ」

店内を片手で指し、笑いかけるAに吸い寄せられる様に降谷は歩みを進めた。






「…すみません、店仕舞いでしたよね。」

あの日と同じ様に降谷はバツが悪そうに言った。


「本当にお気になさないで下さい。
今日はたまたまお客様の引きが早くて、もう来て下さる方も居ないかなと思って早めに諦めただけなんです。
お豆腐を沢山頂いたんですけど作りすぎちゃって…私もここで済ませて帰ろうかなって思ってた位で。」

「そう言って貰えると助かります。」


会話しながらもAはテキパキと降谷へ配膳の準備を進めている。
降谷は、隣の椅子に置いたブーケに視線を落とす。
カウンターテーブルにうまいこと隠れるそのブーケを、どのタイミングでAに渡すべきか、その事で降谷の頭の中はいっぱいだ。

そして、降谷の目の前は次々と彩られる。
この前とは違う器に盛られたご飯、味噌汁、サラダ、切り干し大根の煮物、メインの肉豆腐、そして


「これ…セロリの漬物ですか?」

「はい、昨日の晩に漬けたものです。
あ、お嫌いでした…?」

「いえ、むしろ大好物です。」


降谷の口元が少しだけ緩む。

03話→←03話「肉豆腐とはちみつプリン」



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虎鉄(プロフ) - 朔夜さん» この話において優しいは最高の褒め言葉です、ありがとうございます涙。まさにその通り、ちょろっとしか知りませんがその方をイメージしております!ほっこりをお届け出来ているなら心底ホッとしました。 (2018年6月30日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - あー、なんて優しい話だー。うっかり某特命係の行きつけを思い出し、かってにリンクさせてホッコリ.....。幸せという花束、ありがとう(^-^) (2018年6月30日 19時) (レス) id: 52c615fe9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 即減速したので大丈夫でした笑。この道路でこの制限速度はちょっと…と思いながらも、車社会なので一発免停に怯える毎日です。ご心配お掛けしてすみません!本当にいつもありがとうございます涙。 (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 頑張ってきた発言にホロリときそうでした…数字に囚われて精神的に更新に追われてた部分があったので、2日休むだけで大分プレッシャーから解き放たれました笑。未だスランプ中ですが汗。警察学校組を下手に書きたくないってのもあるかもしれません… (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
ぴよこ(プロフ) - そして覆面Σ( ゚Д゚)!!免停は免れたのでしょうか((( ;゚Д゚)))?気を付けてください(>_<) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3760492a40 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年6月15日 0時

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