03話「肉豆腐とはちみつプリン」 ページ13
数日後
「え…っ？」
朝、登庁した降谷とすれ違った人間は皆、一様に彼を振り返る。
そんな事に気づかないのか、はたまた気にも留めていないだけなのか降谷は真っ直ぐに自分のデスクを目指す。
「おはよう」
「おはようございます。
ふ、降谷さん…？」
ここで初めて降谷は周りのリアクションに答える。
「ん？どうした。」
昨日どころか、日付を跨いで今日になってしまった帰宅時間も何のその。
涼しい顔で登庁してきた上司の片手にはいつも通りのコンビニの袋と、ピンク色。
そう、一同の視線は降谷の持つ可愛らしいピンク色の小さなブーケに集まっている。
「い、いえ…何でもありません。」
生ける為ではなく、誰かに贈る為に綺麗にラッピングされたブーケ。
その行方に皆注目を寄せていた。
頬を赤らめる者、受け止められず放心する者、ハンカチ片手に既に涙する者、内なる歓喜を秘める者。
普段は男女問わず冷静沈着な人間が集うこの場所も、天変地異でも起きたかの様な降谷の行動にざわめきを隠せずにいる。
そのブーケはデスクの傍にそっと置かれたまま、昼を迎えた。
降谷の昼はいつも通りのコンビニの袋に入れられた2点だった。
「降谷さん、今日自分もくじ当たったんですよ。
だからこの前の肉じゃがコロッケお返しします。」
ガサガサと、袋から弁当箱と惣菜の包みを取り出すと、部下はその包みを降谷に差し出した。
「いや、大丈夫だ。」
「ですが…やっぱり毎日その量では部下としては心配です。
今日は自分も追加でパン買ってきましたし…」
「いや、良いんだ。
上書きしたくない。」
「はぁ…(上書き？)」
コロッケ1つ受け取ろうとしない上司降谷の姿に首を傾げながらも、その頑なな姿勢に再び差し出すことは出来なかった。
そして、多くの者がそのブーケの行方を気にしながらも帰宅していった。
遅れて、降谷が職場を後にしたのは22時半過ぎ。
突然増えた書類整理に肝を冷やしたが、帰宅の目処がたっただけ御の字だろう。
前回訪れた際、閉店時間はあってない様なもの、そう彼女は言っていた。
あの時間でそう言ったという事は、恐らくあの時点で本来の閉店時間は過ぎていたに違いない。
それに、安室透で出会ったとはいえ彼女が昼間、もしくは朝から花屋も兼務している事を知ってしまった手前、前回の様に閉店時間を過ぎる事は極力避けたかった。
小さなブーケを片手に、降谷の足は自然と速くなる。
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虎鉄(プロフ) - 朔夜さん» この話において優しいは最高の褒め言葉です、ありがとうございます涙。まさにその通り、ちょろっとしか知りませんがその方をイメージしております！ほっこりをお届け出来ているなら心底ホッとしました。 (2018年6月30日 20時) (
レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - あー、なんて優しい話だー。うっかり某特命係の行きつけを思い出し、かってにリンクさせてホッコリ.....。幸せという花束、ありがとう(^-^) (2018年6月30日 19時) (レス) id: 52c615fe9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 即減速したので大丈夫でした笑。この道路でこの制限速度はちょっと…と思いながらも、車社会なので一発免停に怯える毎日です。ご心配お掛けしてすみません！本当にいつもありがとうございます涙。 (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ぴよこさん» 頑張ってきた発言にホロリときそうでした…数字に囚われて精神的に更新に追われてた部分があったので、2日休むだけで大分プレッシャーから解き放たれました笑。未だスランプ中ですが汗。警察学校組を下手に書きたくないってのもあるかもしれません… (2018年6月27日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
ぴよこ(プロフ) - そして覆面Σ( ﾟДﾟ)！！免停は免れたのでしょうか((( ；ﾟДﾟ)))？気を付けてください(>_<) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3760492a40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：虎鉄
| 作成日時：2018年6月15日 0時
