文字のない愛を。-2- (ページ49)

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さっきまで私が優位な状況だったはずなのに、いつの間にか彼のペースに飲み込まれてて。

ドラマかっていうくらいのスピードで話が展開していくから

慌てて彼から離れようとするけどホールドの力が強くなるせいでそれも叶わない。

健「無視しないでくれる？」

ねぇ、と顎先に手が添えられ、逸らしていた視線を強制的に正面に戻される。

絡んだ相手の余裕たっぷりな視線に自然と吸い込まれそうになる。

望んでいたわけじゃない。

相手は揶揄ったつもりで、生徒なんか相手にしないと思ってたから。

キスとかされても結局は遊びの一環だろうって。

だから、どうせ笑われて振られて、きっぱり諦める。って想定していたのに。

こんな仕打ちされちゃ、逆にどう返していいのか分からなくなるよ。

「…嘘、だ」

やっと捻り出せた言葉も自信がなくて、さっきまであった威勢の焼失を鼻で笑われた。

なんでこの人はこんな自信あんの…

大人の男の余裕？

あ、他の女子から告られてるからか。

いつもあの逆ハーレム状態を潜り抜けてるんだからこんなこと日常茶飯事に決まってる。

私、なんてとんでもない奴に告白してんだ…

今更になって告白を取り消したくなった。

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何も答えないまま沈黙が続き、痺れを切らした彼がもう一度私に問いかける。

健「ほら、どうすんの」

「冗談です、よね」

健「はっ？

冗談だったら今すぐお前を追い出してるわ」

本当に彼のペースに狂わされてる。

そんなつもりじゃなかったのに。

盛大なため息を吐いた彼は未だに受け止めきれない私を自分の胸元に引き寄せた。

彼の肩に顎を乗せる形にはまると、右手を私の後頭部まで持ってきてあやすように優しく叩く。

健「世話の焼ける女の子だこと」

「子ども扱いしないで」

健「相変わらず人に言い返すなぁ」

そういうとこも好きだけど。

さらっと耳の中を通過した言葉に驚いてしまい、思わず肩から離れて彼の顔を見た。

もっかい言ってほしい？と爽やかに微笑む裏側はまるで悪魔のような策士だ。

この人…

完全に私のこと揶揄ってるじゃん。

でも心の奥が反応して、彼の言葉に乗ってしまいたくなってる私がいる。

こんなの、以前の私なら耐えられないはず。

彼が私にかけた恋の魔法ってとんでもない。