文字のない愛を。-2- (ページ40)

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さっきよりも嫌な感覚の中、目が覚めると豆電球の光と白い天井でホテルの部屋だと察した。

視線だけで見回すと自分のキャリーケースは見当たらないのできっと救護専用の部屋だろう。

すると、私に気付いた養護教諭がこっちに来て
「熱、計ろうか」と体温計を差し出してきた。

◇「気分はどう？」

「あんまり、…」

◇「足首は湿布で応急処置しておいたけど、熱もあるみたいだし今日は先生とここにいようね」

「はい…」

ピピピッと鳴った体温計を確認すると、８度５分でれっきとした熱だった。

彼女は立ち上がると、中島先生呼んでくるねと部屋を出て行った。

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暫くすると部屋の開く音がして、彼が来たのだと重い頭で悟った。

廊下で二人が会話しているのが何となく聞こえる。

◇「私、他の先生に報告行って来るのでそれまでお願いします。

Aさん、スーツケース取りに行ってくるからね」

彼女はぴょこっと顔を出すと、少し急ぎ目でまた部屋を出て行った。

報告しに行くの大変そう…あの先生、絶対怒ってるだろうな。

廊下で一人になった彼は隣のベッドに腰掛けるので、目を合わせないように慌てて彼に背を向けた。

こんな姿、見られるとかツイてない…

健「まだしんどい？」

「うん、」

健「昨日も目眩あったんでしょ、なんで言わなかったの」

「…酔いだと思って」

健「余計な心配させるなよ」

ごめんなさい

そう口にしたいのに言葉が出てこない。

代わりに目頭が熱くなるばかりで

なに泣こうとしてんの、

泣く場面じゃないでしょ。

しかも先生の前だよ？

こんなの見られたら絶対変に思われる。

健「じゃ、ちゃんと休めよ」

でも、そんな私に気付いていないのか

そう言ってベッドから立ち上がる彼

え、もう行っちゃうの？

今来たばっかじゃん。

それに先生にも頼まれたっていうのに。

背中越しに感じるどこか冷めているような態度の彼に留めていた感情が瞳から溢れていく。

いつもそっちから寄って来るくせに、

今日に限っては離れてくっていうの？

そう考えたら行動するしかない私はベッドから飛び起きていて。

健「えっ、」

熱で意識が朧げながらも、彼に抱きついたのは確かだった。

「…いかないで、」

ようやく出た声はとても弱々しく、自分じゃないみたいだった。